温度 相野零次
冷蔵庫に入れて冷めてしまった恋を180度のオーブンでもう一度温め直しても、一度冷えた恋はもう愛には戻らない。悲しい現実。戻せない時間。
あのときのラインの一行を違う一行に書き換えていれば、今頃まだ仲良くやっていけたかもしれない、なんていう未練がましい現実を忘れるために仕事に打ち込む。
真夏はいつも愛に冷たくて、真冬はときどき恋に暖かければいいのに。そうして素敵な温度を思い出したらお店の人に頼んで綺麗にラッピングしてもらおう。そして君に届けに行こう。
流れ星は精一杯燃えて光を発している。その光が地球に届いているあいだに君に伝えなくちゃいけないことがある。でも僕は毎晩それに気づかぬまま、いや、知らないふりをして過ごしている。
夜空の恋を探している熱い星のことも知らないままの、愛を忘れて冷めきった僕。早く見つけ出さなきゃならない。