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スレッドNo.6014

感想と評 7/25~7/28 ご投稿分 三浦志郎 8/3

1 詩詠犬さん 「洗濯物的日曜日」 7/25

タイトルからすると、ある一定のイメージが湧いてきそうな気もしますが、この詩は必ずしもそうではない点が、むしろ特色と言ってもいいのではないでしょうか。(ああ、そっち、いきますか~)って感じですね。すなわち、洗濯といったひとつの風景に滲み出た屈託のようなもの?ノスタルジックに潜んだ虚しさ、哀しさのようなもの?そういったものが感知されます。そして、この詩は朝~昼~夕がちゃんと書き分けられている点、ちょっと面白い律儀さを感じました。詩詠犬さんはこの詩の雰囲気の中で一日を終えたことになります。平易で簡潔な書きぶりも似合っています。ストーリー的な挿絵も趣きを添えていました。甘め佳作を。


2 こすもすさん 「終着駅」 7/25

初連「未来と書かれている」で、早くもファンタジーであることが知れます。
さて、ストーリーは偶然乗り合わせた「私と彼女」で終始します。で、二人の行動は微妙に違ってきます。

彼女……「行き先・未来」から「行き先・希望」に乗り換えている。そして今までの暗い表情は消えている。なんとなく運の上向きを感じさせる。
私……今まで通り、同じ列車「未来」に乗っている。特に変化は認められない。

要約すると、こういった感じなんですが、さて、何故こういった違いが生じたか?その違いが何を意味するか、が明かされず、読み手はそこにストレスを感じそうなんです。僕個人の感触を言わせてもらうと、本作は未完、あるいは導入部で、どうも続きがありそうに思われてならないのです。
もしも、これ一作で完結とするならば、どこかに何らかのストーリーの落しどころを設けたほうがいいように思いますね。今までのこういった傾向の詩では、それなりに回収できていたように思うのですが―。佳作一歩前?でしょうか。


3 森山 遼さん 「学生時代」 7/26

まずもって、この時代の捉え方は人により千差万別であります。個人差の時代と言ってもいいでしょう。それを表するひとつの係数に「自我の形成過程」があると思います。特に高校~大学においてです。まず自分のことを考えてみました。その時代は今の自分の明らかな土台だったが、今の自分から当時を振り返ると”明らかに未熟で不器用だった“と言えます。(こうすれば良かったのに)と思うことが多々あります。そんなことを予備知識的土台として、本作を読んでみました。結果として、この詩の基調としての「寂しさ」といった感慨が導き出されるかのようです。後悔のニュアンスもありそう。そういった回想の仕方です。ところで、ヘンな読み方をするならば、詩としては陳腐な「寂しい」という言葉を導き出して来る、その前文の唐突、無関係、奇妙さ、が面白いと思うわけです。「飛行機雲」「東京の夜道」「ドイツ語」「猫が鳴く」「友達帰る」「東京去る」などの、この詩への寄与のことです。甘め佳作を。


4 津田古星さん 「夫婦の運命」 7/26

仕事・家庭・子育てがピーク時の夫婦は忙しくて、考えてる暇もないほどでしょう。この詩の言わんとするところは、そういった事情から解放された夫婦が考えることのように思えます。事実、ご主人は75歳とのこと。つまり思考を固めるための経験の積み重ねが前提になると思います。
どこを読んでも理にかなっているし、
「何で二人は結婚したんだっけ」
「何で人生を共にしているんだっけ」
―のくだりは、評者を含め熟年夫婦の実感こもった感慨であるでしょう。4連は本当に立派なものですし、それ以降はご主人の気高いふるまいを通じて、ご主人賛歌の趣があります。こういった年代の夫婦を正面から描いた作品はありそうで、ない気がします。(我もかくあるべし)と、ホント、そう思います。甘め佳作を。これからも良いご夫婦で、どうぞ末永く。


5 静間安夫さん 「人工衛星」 7/28

冒頭佳作。 人工衛星というものは理工学分野ですが、意外と文学的ロマンを載せやすいものだと今回調べて思ったことでした。それは後ほど述べるとして、本作のことです。まず擬人化に全く無理がありません。「地球=青く光るあなた」「人工衛星=定められた軌道を回るわたし」―これが主軸になっての喜びと悲しみです。

普段……辿り着けないけど、常に近くにいてくれる。
その最期……ようやく懐に入れるが、その時、わたしの身は燃え尽きる。―A

(A―任務を終えた人工衛星には概ね2つの末路があるらしくて、ひとつは、この詩のように大気圏に突入して燃え尽きる。ひとつは”墓場軌道“というのがあるらしくて、そちらに軌道修正して後輩衛星に道を譲り、自分は永遠に宇宙漂流する)

この詩は喜びと悲しみが共存します。この事態は人工衛星の運動理論を充分把握し、その一生を文学に翻訳したものです。それを受けての終連はこの詩の実(じつ)を雄弁に語っていると評価できるのです。

アフターアワーズ。
さて、人工衛星です。この詩にもエピソードがありましたが、他にも調べたことを書いてみます。
初の人工衛星に動物実験もなされました。犬が乗せられたのです。もちろん死んでしまうのですが、そのあたりの悲哀を「MY DEAR」同人・坂井一則氏が作品「冬の夜」で書かれています。人工衛星には音楽~レコードも乗せられたようです。宇宙人にでも聴かせるのでしょうか?人工衛星「1977年・ボイジャー」にブラインド・ウイリー・ジョンソンのブルース曲が乗せられたそうです。そのあたりの事情を「MY DEAR」同人兼評者・水無川 渉氏が作品「夜は暗く」の中で取り上げています。 そんなことを想いながら、グラス傾け、夏の夜空を眺めるのも一興かも? 


6 白猫の夜さん 「今からあなたに呪いをかけるわ」 7/28

おっと、これは恐い詩ですねー。
この詩の発話者は「~るわ」とあるので、女性です。当然、相手は男性で、大部分、恋のもつれと思われます。あるいは手ひどいDVを受けたとか、考えられます。非は男にあるでしょうが、女性の相手への開き直りと憎しみは尋常ではないです。相当のことが想像されます。その心情、大いにわかる部分もあるのですが、詩という創作物だから、まだしもという部分もあるし、いっぽうで詩としての評価といった部分もあるわけです。
正直に書かせてもらうと―失礼ながら―ここまで書く必要があるか?これは詩にしなくてもいいんじゃないか?と思うわけです。作者さんの詩に対する品位ということもあるでしょう。そんな観点からも、これは評価も無しにしておきましょう。次回に期待しましょう。


評のおわりに。

さて8月です。 擬人化路線で、Mr.AUGUST。 JUNE、JULY、“月の女性二人”を見事にサポートして、晴れて主役に躍り出る。
筋骨逞しく黒のタンクトップにサングラス。“こわもてキャラ”で熱気まき散らし時の街道を闊歩する。 しかし、そのスタイルとは裏腹に案外思慮深く誠実で優しいのですよ。  では、また。

編集・削除(編集済: 2025年08月03日 07:11)

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