ため息の旅 朝霧綾め
ふぅ、と吐いた
満足のため息
霧のように真っ白で
あんまりきれいだったから
ガラスのコップに入れて
蓋をしようとする
それをさとったかため息たち
すばしっこく机の上を旋回し
部屋の外へ飛んでいった
ため息は
家の中を一周して
お昼寝する子供たちの寝息や
台所の湯気と出会い、混ざっていく
ため息も寝息も湯気も
あたたかい一群の気体となって
廊下、リビング、寝室を行ったり来たり
おかげであたりは
もくもくと湿って蒸していく
ああ暑い
家の中に雲ができてしまいそう
ひゅうう
窓を開けたら
中に入ってくる空気
ひゅうう
それと同時に
外へ出る空気
ため息たち、今度は風になって
七階のベランダから急降下
団地の洗濯物をはためかせ
吹いていった
吹いていき
遠くの山の
どんぐりを揺らしにいった