鍋 相野零次
ぐつぐつ、ぐつぐつと煮えたぎる生命の音がする
愛とか蝶とか、春とか光る朝とか
生命そのものを味わうための具を選ぶ
最終的には僕自身が具の一部となるのだろう
闇のナイフで切り刻む
腐ったキャベツや熟れ過ぎたトマトを
生命そのものを脅かすような輩を全て切り刻む
そうして煮込んでいる鍋にぶちまける
生命そのものの疑問全てをぶちまける
ああ 明日はもうこないのだろうか
昨日の疑惑を夢の中にしまい込んで
僕は銃口の狙いを自分自身に定めて
もうお手上げだと銃を撃った
ばんばん、ばんばんと今日と共鳴する音がする
生命そのものの驚きが一緒になって
僕の魂だけが生き返った
魂だけになった僕の周りに絵を描こう
生命そのものがキャンバスには散らばっているから
より鮮明に絵の具と筆を使って蘇らせよう
ああ 明日は来るんだと僕は悟った
朝になれば誰の元にも
愛を冒涜した僕の元にも朝は来るんだ
そして愛の太陽で焼け死んだ僕のむくろは
誰かの鍋にまた放り込まれるのだろう