◎8月5日(火)~8月7日(木)ご投稿分、評と感想です。(青島江里)
(お先に失礼します)
◎8月5日(火)~8月7日(木)ご投稿分、評と感想です。
☆熱帯、夜を超える 荒木章太郎 さん
今年の夏は酷暑を超えてしまっていますよね。暑すぎて、まさしく「自然と無意識が溶ける」っていう感じになってしまいそうです。
三連目までは、自然のままに拝読することができましたが、四連目で引っかかってしまいました。「君」です。流れのままに拝読すると「君」は「人」であるかと思えてくるのですが、すぐ後に「何百年も繰り返してきた」とくるので「人じゃないの?」ってなってしまったのです。これらの行の前に、予告のような行を追加するか、「君」を人と誤解されないような言葉に変える必要がありそうです。
五連目からは、命に偏見を持ってはいけないよということや、人間の傲慢さなどを表現してくれようとしているのだなということを感じました。七連目なのですが、こちらも、虫のことから突如、熱帯魚という魚について書かれているところが引っかかってしまいました。虫の生活している屋外などについて、視線を映している中、突然の水中で生活する魚について続けるには、間を取り次ぐような言葉が必要な気がしました。
全体的にみると、今回は主題に関する副題があちらにもこちらにも存在してしまったことが、引っかかってしまった原因のように感じました。蛇行しそうになっているところを見直して推敲されるとよいかと思いました。
今回の作品、連を一つ一つ、ピックアップして拝読させていただくと、それぞれ、なかなか思いつけないようなレトリックに目を惹かれました。
⑴
熱帯夜で
自然と無意識が溶ける
暑さで凍りついたからだを
朝が溶かす
⑵
鳥の囀ずりが取り残した
合間をぬって蝉が泣く
先細って消える、
夢と呼ばれていた声の残響のようだ
⑶
俺のベランダでひっくり返っている
夏の骸を埋める
土に──
帰る土がない
ここを耕して俺が
土になるしかない
特に⑶は、心の、怒りにも似た勢いが感じられて印象深かったです。
レトリックは多く使うと、よい点が霞んでしまうことも多いとされることもありますので、それを片隅に置きつつ、自分の世界を描いていかれると、さらによい作品になると思いました。とても印象深い表現のある作品でした。今回は佳作一歩手前を。
☆新品の電池 多年音 さん
初めてさんですね。今回は感想のみ書かせていただきますね。
押入れ掃除不意にみつけた
小学生の時の理科の工作キッド
この二行を見つけた瞬間、私の心の中にワクワク感が走りました。そうです。ありますよね。あ!懐かしい!こんなところにあったんだ!動くかなぁ~!というワクワク感、ドキドキ感!早く次の行が読みたいなどと思いつつ、次の行に視線を移しました。
三行目以降がまた面白いのですよね。詩の主役は「小学生の時の理科の工作キッド」なのかと思いきや、なんと、そこに入れる電池になっていく展開が面白かったです。
「双子の電池」っていう表現はなかなかの可愛らしさでしたし、電池に関して「どっちが新品かなんて当てようがない/中身は全く違うのに」と思うところも暮らしのあるある感がいっぱい出ていて、興味をそそられました。
四連目の「見つめても見つめても。」ですが「。」はこだわりがないようなら、無しの方が自然かなと思いました。また、同じ言葉を繰り返すのも良いと思いますが、ジィッと見るという意味合いにしたいのなら「食い入るように見つめても」という方法もアリかと思いました。
五連目から最終連にかけては、予想外の展開。まさか宝石や爆弾に例えるとは。なんだかんだいいながら、誰かに何の答えを求めることもなく、すべてが自己完結で終わっているところ。こういうのってあるよなぁって、思いました。みんなが知らないだけで、個々、自分ひとりでいる時、むにゃむにゃと、他愛のないことを考えたり、呟いたりして自己完結することが。
そして、何が面白いのかっていうのは、作者さんがこのような、何気ない暮らしのあるあるを詩にしたいなって思えること。そして、ちょっと皮肉っぽいものを織りまぜながら、独自の詩の空間を完成させてしまうこと。しかも堅苦しさが全くなく、それでいて、個性的なスタイルになっているところが、とても面白かったです。
☆世界 喜太郎 さん
世界は広いですね。地球だけではなく、宇宙単位で考えたら、それは計り知れないものだと思います。そしてさまざまな生き物の命が繰り広げる世界のことを考えると、これまた、計り知れない世界がどんどん膨らんできますね。ゆっくりとした静かなリズムと空気を感じられる詩行。無限の世界を想う様子を、素直なままの言葉で描いてくれましたね。
四連目の「微笑めたら」ですが、このままでも良いと思いますが、「微笑むことができたら」の方がしっくりとくるのではないかと思いました。
最終連の「と思う」ですが、これもまた、このままでも良いと思うのですが、「踏み出してみたい」としても良いかと思います。元々、思ったことを書いているので、「と思う」という言葉がなくても充分に伝わると思います。
三連目。この作品の中で、個人的には一番いいなぁと思った連です。人生の所作、動作を背伸び、しゃがむ等、身近な動きでわかりやすく表現してくれたところがよかったと思いました。
五連目。三連目と同じくらいよかったです。
「それは心の方が世界より大きく広いから」
何が良いかというと、大人が書いた作品なのですが、まるで本当に純粋な子供が書いたような表現になっているからです。全然、純粋な子供のような気持ちを狙った感じもなく、さらさらと自然に詩行の流れで行き着いたように思わせてくれるところがよかったです。細かいことを言うなら「大きく」のところは「大きくて」にする方が良いかと思いました。
静かな空をひとり、ゆっくりと眺めながら人生を考えるような空気の流れる作品でした。今回はふんわりあまめの佳作を。
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このような酷暑の中でも、作品を生み出し、投稿作品で溢れる掲示板を見つめていると、
見習わなくてはという気持ちでいっぱいになりました。
暑すぎる毎日ですが、どうぞお元気で。
みなさま、今日も一日、お疲れさまでした。