朧月夜のコオロギ もりた りの
上弦の月に抱かれて
コオロギが響きわたる
凛とした音色が高鳴る
耳から脳内を反射する
月明かりが雲に揺れ
清明な超音波が貫く
じっと虫の音に浸る
毛穴から肉を震わす
ススキを秋の風が撫で
大地に羽音が充満する
音色が体を突き刺す
背中から骨格を振動させる
緑道を月が照らし
掘立て小屋の犬を癒やす
樹木のフクロウを和ます
モグラの子供を目覚めさす
音色が頭を貫通して夜空へ
腕を貫通して菩提樹へ
心臓を貫通して朧月へ
脚を貫通して大地へ
星が震えて
滝のように流れ
コオロギにいくら落ちても
情愛の響きは止まない