砂漠の心 荒木章太郎
蜃気楼のなかで
夢み 働き 愛していた
すべては駱駝の背で閉じられる
二つのコブは 自らを支える山
渇く民は
虚無に沈まぬよう
強き父を望んだ
だが 待っていたのは
裁き 捌き 砂漠
荒れ果てた心身は
耕されぬまま
生き延びるために
奪うことを選んだ
略奪から取引へ
取引からまた渇きへ
慈しみを知るためには
自己完結を壊し
他者のまなざしに触れるほかなかった
海の君と出会ったとき
砂漠は海辺に
潤いを映した
潮風に香る黒髪から
恋し 愛し そして捧ぐ
「すべてを捧ぐ」という
俺に概念が生まれた