MISS FINE 三浦志郎 8/22
SAX奏者・作曲家OLIVER・NELSONに「MISS FINE」という曲がある。
比較的地味だが、知る人ぞ知る。私は名曲と思っている。
一説によると、これは彼の姉さんか、妹さんをイメージして作曲したとされているが―。
「OLIVERさん、そうじゃないでしょ?あなたのかつての恋人KARENさんのことでしょ?」
*
なあ フィル
昨日は不思議な日だったよ
君も知ってるだろ?
僕が昔付き合ってたKARENのことさ
“ロデオ・ドライブ”を歩いていてね
偶然 彼女を見かけたのさ
僕はびっくりして
彼女に気取られないように
とあるカフェの物陰で彼女を見てたんだ
*
Walkin’
歩く 歩く
歩いてゆく
足許SHINY STOCKINGSの
KAREN
ブロンド髪を風に流して
心持ち あごを上げ
来るべきものに向かって
歩いてゆくようなしぐさ
そこに爽やかな意志がある
実は彼女
OLIVERがいるのを知っていた
近づいて声をかけてもよかった
が そうするには
すでに何かが失われていた
気づかないふりをした
よそ行き顔
よくあることだ
ただ
心の中で呟いてはいる
OLIVER ごめんなさい わたし もしかすると
あなたとは違う世界に生きていたのかもしれない
*
KARENは颯爽と歩いていく感じだったな
おそらく 今も順調で
幸せなんだろう
もう 僕は何も言うことはないさ
ただ
彼女の愛称として
「MISS FINE」と言ってあげたい
過去も今も未来さえ―
それだけさ
いろいろあったけど
今は
懐かしい想い出だけが残っている
笑顔で後ろ姿を見送ったんだ
*
OLIVER・NELSONはJAZZの世界で充分成功した。
彼女KARENも違う世界で成功したことだろう。
そして今は、
「MISS FINE」として、
満たされているに違いない。