猛獣と死神
夜道を亡霊のように歩いていると、
片足をぐわっと引きずった犬が、
皮膚が焼きごてを押されたようにただれた犬が、
死神のようについてくるのが見えた。
私はどこへ向かっているのか。
蛍光灯がじっとり照らす舗道は、
存在を誰にも知られない草を浮かび上がらせ、
じゅくじゅくした死臭をただよわせ、
知らないどこかへ続いている。
この先は闇だ。
それは、わかっている。
獰猛な獣のような月が、
目をぎりぎりと充血させながら、
私の行く先をふさいでいる。
その先には闇、後ろには病んだ犬。
ぶわぶわ震える声で、
強大な月に自身のアイデンティティをかけて、
腐敗し始めた歯を向けながら、
犬は吠え続けている。
これが、勇気というものか。
犬の小さく萎れたしっぽが、
私の震える足先に触れたとき、
この犬といっしょにどこまでも闇の中を進もうと思った。
たとえこの月と、全世界と戦うことになったとしても。