偏頭痛のあと 人と庸
今日の夕空もうつくしかった
カナカナが鳴いて
ヤマバトが鳴いて
よいものはすべてそろっていた
ただ まだ少しだるい体と
よその家はより四角く見えるという妬み
涙ではれぼったい目と
明日からまた世界の授業を受ける物憂さ
それらを感じる以外は まことによい夕方だった
何か書いてと点滅しているカーソルのように
痛みは左のこめかみで 自分の仕事に忠実だった
そのために私は仕事に行けず
家事もできず おいしいものも食べられず
光も音もさえぎって この日は
世界とすこし距離をとる
薬ものむ 何もかもに鈍感になるように
でもいちばんの味方は氷
カーソルの点滅を遅らせて
打たれる文字を曖昧にしてくれる
そのすきに眠りへ逃げ込むのだ
眠りからぬるりと這い出すと
カーテンが受け止めている光は淡い
今日の夕空はどんなだろう
わたしはいつもの場所にいないけれど
誰もこないこの部屋に
光だけは わずかなすき間から
カーテンの繊維の間から
じわりと入り込んで空気とまざる
まざり合ってできたその色を
わたしはまだパレットに溶くことができなくて
ひとりで寝てひとりで目覚めた今日
世界はみんなからどんな質問をされていたか
それさえもわからないから
惰性でよれたシーツの皺の間でもう一度眠る
(そして 世界の授業に遅刻する夢をみた)
(夢は予行演習という)
(わたしは明日は)
(世界と相対する気持ちでいっぱいらしい)