病 荒木章太郎
やまいに伏していた
病室の窓を開けたら
草原のふりをする都市が
地平線に連なるやまの
足元にひれ伏していた
その腹にのしかかる
かみなりの積乱雲
医者からは
「病は現象だ」といわれた
(俺が病なのか)
悩ましさが怒りの稲妻に変わり
目まぐるしく腹を鳴らした
おそれおおくも
神になろうとは考えていない
しかし、とこしえの空に憧れていた
この小さな体が
影響を与える大空ではなかった
怒りは、やがて空腹に変わる
巡るように変わる天候のようだ
初めて食べ物以外のものを
口にして腹に入れた
無力な存在である俺だ
決して満たされるものではない
完璧を目指すことを手放す
やめる俺をうやまうのだ
無力を抱えて俺は鐘を鳴らす
病と共に生きる
それが健やかな俺だ