飛ぶ心 相野零次
飛ぶ。僕の代わりに僕の心が空を飛ぶ。
どこへ行くのかわからないまま、どこへ辿り着くのかわからないまま。
ときどき地面に心を強く打ちつける、飛ぶことは自転車に乗ることよりもずっと難しい。僕の心はそのたびに傷つくけれど、それも気にならないくらい空を飛ぶのは気持ちがいい。
やがて僕の心の一部が宇宙になり全てと混ざり合い、できあがった身体に押し込められる。僕はそのことに無自覚のまま、再びヒトとして生まれ変わる。
以前、ヒトであった記憶は全て忘れ、もう何百度目かわからないヒトとしての生を授かる。
僕の心の一部は誰かの、何かの心の一部になって生き続ける。
そして出会った瞬間、思わず振り返りたくなるのは、以前の自分の心の一部がその人の心の一部となっているからだ。
世界は繰り返し続けているから、僕らはきっと何度も出会ってすれ違っている。
恋によって心の密度が大きくなり愛によって心の数はまた増え続ける。
僕はまた誰かに恋をして、愛を全て捧げたい。