2025年8月19日から8月21日までのご投稿分の感想と評です 夏生
2025年8月19日から8月21日までのご投稿分の感想と評です
「プラネテラ」 松本福広さん
松本福広さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「プラネテラ」の評を送らせていただきます。
四連目から六連目、宇宙から地球、日本、「あなた」と
壮大な奇跡、縁を感じます。
<宇宙の広さは知らない
宇宙の数は知らない
生物が住む惑星の数は知らない
知らないことしかないような
宇宙の中のたったひとつがここにある
この連、素晴らしいです!スパッと着地をきめた
美しさがここにあります。思わず「おお…!」と
ため息が出ました。
最後、これも着地が見事です。二人の関係性の深さ
主人公がどれだけ相手を思っているか、を
直接的な愛情言葉を使わず、二人で見たプラネタリウムから
感じたことを通して思いをのせて表現する。
「あなた」との出会えた奇跡に対する感謝の気持ちが
あふれた一篇でした。あたたかな余韻が残りました。
御作佳作とさせていただきます。
「握(にぎり)」 上原有栖さん
上原有栖さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「握(にぎり)」の評を送らせていただきます。
命の温度を感じる一篇でした。
あたたかいだけでなく、やさしい強さがあって、人が人でいられる
ぬくもりがありました。
絵本のようなやわらかい色彩や造形を思わせる言葉の展開。
直接的な言葉よりも伝わり、深くしみてゆきました。
ひらがな表記が多いところから、この詩にこめられた平和への祈りを
願いを広く伝えようとしていると感じました。
「握」は拳でなく人と手を繋いでできる絆、繋がりであること。
それは相手を縛ったり苦しめるものではなく、寄り添い、助け合うための
ものであると感じました。
<どこまでも広がる青空
を、世界中の人が心地よく明るい気持ちで見上げることができるように
少しずつでも治まるようにこちらも祈りを捧げました。
御作佳作とさせていただきます。
「ブルーモーメントによせて」 香月さん
香月さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「ブルーモーメントによせて」の評を送らせていただきます。
情景が描かれた作品は追体験が出来て楽しいです。
走る電車の音が聞こえてきます。
ただ情景や雰囲気が描かれているのではなく
<手元の画面から上げた視線の
疲れた視界いっぱいに
と、主人公の心身の状態を軽く差し込んでから
さらに情景が流れていきます。ここがいいですね。
映像を見ているような心地になりました。
ふっと浸って心に刻んで、帰っていく軽やかさが魅力的な一篇でした。
「石礫のうた」 人と庸さん
人と庸さん、初めまして!(という気がせず過去いただいた詩人の皆様の作品群からお名前を探しましたがお見受けできなかったので、初めましてでした。もし違っていたらお詫び申し上げます)ご投稿くださりありがとうございます。
初めて方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「石礫のうた」の感想を送らせていただきます。
「わたし」と「きみ」の間で何があったのか。特に「きみ」は大きな痛手を負ったようです。
「きみ」を車にのせて山や海へ行きます。主人公の切ない気持ちと恐れを感じます。
四連目。道のある町とは思い出のある懐かしい場所でしょうか。
だったのに、という言葉から変化の驚きと強烈な寂しさを感じました。
<(隣の家の住人は 朝から道を掃いている)
物事が変わろうと変わらない日常がある。それは時に残酷に見えることもあります。
主人公は静かにそれを受け入れているようです。
ドラマのセリフが過り、主人公はそれに応えるように思いを巡らせます。
<石礫のような人間の
石礫のような生活は
それでも色彩にあふれている
力強く響きました。「広重ぶるう」の中のセリフから展開されていますが
言葉がさらに活きています。「わたし」と「きみ」の間になにがあったのか
気になったまま終わりました。気になることでまた言葉が、物語が展開される
そんな楽しみ方もできる作品でした。
またのご投稿をお待ちしています。
「軌跡」 喜太郎さん
喜太郎さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「軌跡」の評を送らせていただきます。
主人公は相当つらく厳しい中で生きて来たようです。
つらい時ほど過去を振り返り、あの時の選択は正しかったのか
この先どうなってしまうのか、と後悔と不安に苛まれます。
本当に苦しいときは孤独なのだと感じました。あまりの苦しさに叫んでも
誰も助けに来ません。この詩の主人公は有刺鉄線が絡まって激しい痛みを抱えながら
血の滲んだ足を動かします。
その姿は壮絶です。命が燃え尽きるまで一歩を止めない。熱気を感じるほどの力強さを
感じました。
あの頃の自分が懸命に選んだ結果を悔いるのではなく、認めたことで主人公はさらに強く堂々と一歩を踏み出します。痛々しい状態からふっと抜け出せたような、次の一歩を踏み出す勇気をもらったような心地になりました。
御作佳作とさせていただきます。
「砂漠の心」 荒木章太郎さん
荒木章太郎さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「砂漠の心」の評を送らせていただきます。
砂漠の世界で生きる民を想像します。過酷な環境でも生きる術を
知っている。猛暑酷暑と騒ぐことが恥ずかしくなるくらいです。
40℃を超えるとなればしんどくなるのは仕方ないことですが。
人為的に自然破壊した報いが今、まわってきてしまったと
思うしかありません。
この詩の五連目までは映画「アラビアのロレンス」を思い出しました。
<荒れ果てた心身
<生き延びるために
奪うことを選んだ
<略奪から取引へ
取引からまた渇きへ
終わりの見えない絶望感が漂います。
<慈しみを知るためには
自己完結を壊し
他者のまなざしに触れるほかなかった
主人公の心は破滅寸前まで追い詰められているような
切実さを感じました。
それを救ったのは「海の君」
砂漠を潤す海の存在から自分と真逆の人で
求めていたものを持っている相手と出会えた
渇きが潤い、癒されていくうちに
<恋し 愛し そして捧ぐ
「すべてを捧ぐ」という
俺に概念が生まれた
破滅寸前から心が立ち上がる瞬間を見たような気がしました。
一点だけ、すみません。海の君の描写がもうひとつありますと
この詩がさらに魅力的になるような、主人公に新たな概念を
生ませた存在の大きさをもっと知りたいと思ったので。
御作佳作半歩手前とさせていただきます。
「貴女」 水井良由木さん
水井良由木さん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
御作「貴女」の感想を送らせていただきます。
「青いドレスの貴女」は淑女のような清楚で気品のある方を
イメージしました。
チェンバロに施された柄は
<金の蔓が柔らかな螺旋を描き
その中には真紅の薔薇が咲き誇る
チェンバロ、検索してみまして。あたたかみのある華やかな
装飾が施されているのですね。素敵な楽器です。
厳かで毅然とした音色に惹きこまれます。
作中の「青いドレスの貴女」が奏でる音色をゆったり想像します。
彼女には秘密の恋の思い出があると。主人公がそのお相手なのか
それとも新たな恋の始まりなのか。
<胸の奥から燃え上がる金の蔓と真紅の薔薇よ
情熱的な展開が予想されます。
言葉のリズムがよく心地よく読み進められました。
またのご投稿をお待ちしています。
「足音」 ゆづはさん
ゆづはさん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
御作「足音」の感想を送らせていただきます。
<足音だけであなたがわかる
この一文で主人公と「あなた」の関係性の深さ、愛情の濃さが
わかります。決して重いものではなく、そっと寄り添い気遣う
あたたかさを感じます。
言葉、表現のひとつひとつから「あなた」への思いを感じます。
<ドアが大きく欠伸して
あなたの気配が流れ込み
この表現、いいですね。それから展開されゆく描写も
かけがえのない二人のひとときを見るようでした。
詩心のある方だと思いました。またのご投稿をお待ちしています