人体 相野零次
ふわふわしている
ふわふわしている脳みそがある
風にゆられてたくさんの脳みそが飛んでいる
そのなかのどれが僕の脳みそかわからないが
僕はちゃんと考えている
明日の休みのこと
小さな生き物たちのこと 世界平和
殺されたくない
淡い光に照らされた部屋のなかで
肺や唇や食道、肝臓、大腸あらゆる内臓がある
隣の部屋にはばらばらになった手足や頭や性器がある
たぶんその部屋で合体して人間が出来上がるんだろう
僕はちゃんと考えている
これが夢じゃないこと
ずっと続いていること
何の意味があるのだろう
そのときひとつの脳みそが弾けて透明な液体になり
それがまた新たな臓器となって形作られた
ここは生まれ変わりの部屋だろうか
人がばらばらになっているのに
不思議と気持ち悪さは感じない
ある種の芸術作品のように感じる
きっとここは神様がお作りになられた部屋なのだろう