幸せのハードル ゆづは
ひとつ、嬉しいことがあれば
心はすぐに 「もっと」を求めて
それを追いかけ、走り続ける
けれど、満たされぬまま
指の隙間からこぼれ落ち
残るのは 無力と焦燥
深い息が水底へ沈みゆく
少しの自信、勇気、
それを掴んで──束の間
言葉の光が眩しすぎて
私の声はかすんで消える
期待は裏切られ
肌に凍りつく指先が触れる
ひそやかに忍び寄る影
冷たい夜気に肩を抱かれる
空虚な日々の中に漂い
答えのない問いが
巡り巡って
無意識に過ぎ去った時間は
二度と戻ることはなく
なぜ、私は見逃してしまうのか
目の前にひっそりと咲く
ささやかな喜びを
そして、私は気づく──
跳べないままの
ハードルを緩やかに下げ
握りしめていた
手のひらを開けば
あたためていた想いの欠片が
静かに煌めき始める
私は ただ一歩ずつ、
確かに歩いていく
足音を深く刻みながら
遠く響く風の歌声が
私を導いている
未だ見ぬ色彩の果てを
照らし出すように