MENU
1,537,168

スレッドNo.6200

9/9〜9/11 ご投稿分の感想です。 紗野玲空

お待たせいたしました。
9/9〜9/11にご投稿いただいた作品の感想・評でございます。
素敵な詩をありがとうございました。
一所懸命、拝読させていただきました。
しかしながら、作者の意図を読み取れていない部分も多々あるかと存じます。
的外れな感想を述べてしまっているかも知れませんが、詩の味わい方の一つとして、お考えいただけたら幸いです。

******* 

☆「まきびとひつじを」 松本福広さま

松本福広さま、こんにちは。
御投稿ありがとうございます。

ノエル (Noël)はフランス語で「クリスマス」を意味する言葉ですね。
補足のご指摘通り、この言葉は「誕生」を意味する言葉に由来すると考えられているようです。
この詩では「誕生」の喜びが優しく描かれていますね。
ひらがなの「のえる」の呼びかけ、詩全体がかな文字の持つ柔らかさや温かな雰囲気に包まれて、心地よく響きました。
バッハのカンタータ「羊は安らかに草を食み」を聞きながら拝読しましたが、穏やかな情景が一層鮮やかに浮かび上がり、心に響きました。

教会での子ども視点による初連の導入から、イエスの誕生を祝う場面へと自然に展開してゆく構成が見事です。
内容的には、特に3連目の

 みんなは
 生まれてきた子に
 なんて言葉をかけたのだろう?

という問いかけにはっとさせられました。
この素朴で深い問いは、特定の宗教を超え、あらゆる誕生の瞬間を考えるきっかけとなります。
さすが松本さんらしい視点に感心しました。
母子の対話を通じて、「名前」や「初めての言葉」の大切さが温かく描かれ、私も自身の「ことばの歴史」を振り返りました。
このような意識をもたせてくださったことに感謝しています。

 たいせつな りんごのように

生命の象徴であるりんご〜赤いりんごが心の中にポッと灯を灯してくれたような穏やかな温かさに包まれて読み終わりました。

ありがとう
おめでとう
シンプルな言葉が、誕生の喜びをまっすぐに伝えています。

先にも述べましたが、ひらがなのリズムと優しい言葉選びが、詩を愛おしく感じさせますね。
いのちの誕生を祝う温かさと、ことばの深い意味を静かに教えてくれる、柔らかな光のような優しさに満ちた、素敵な詩だと思いました。
構成も精緻であり、内容の豊かさも詩としての洗練された技量も見事な作品だと感じました。

御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。



**********

☆「トンボ」 喜太郎さま

喜太郎さま、こんにちは。
御投稿ありがとうございます。

 トンボが死んでいた

をきっかけとして、喜太郎さんが伝えたかったことは

 誰も彼もが何かを背負って
 誰も彼もが何かを落として生きている

以降にあるのではないかと思いました。

「墓穴を掘る」という行為は、慣用句としての意味を超え、実際にトンボを丁寧に葬った作者の繊細な心を映し出していると思います。

 きっと自分も この季節感の無さの暑さに
 まったく持って関係のない寂しさを感じたからなのだろう
 自分の心と体の感覚も 全くズレている

秋の気配漂う空を飛びたかったトンボが、夏の暑さに命を落とした。その季節のズレは、都会のカラカラに乾いた土や寂しさと響き合い、作者の心身のズレ、内なる孤独を浮かび上がらせているように感じます。

季節にはぐれたトンボの死を通じて、様々なズレとそれに伴う寂しさを詩的に捉えた素晴らしい作品だと思いました。

 ただ それだけのことだから

締めの詩文は、命の儚さや記憶の淡さを静かに受け入れる姿勢が示され、深い余韻を残します。
誰も彼も、わずかな土を洗い流すかのように、小さな命の記憶を忘れて

 誰も彼もが何かを背負って
 誰も彼もが何かを落として生きている

のでしょう。
深く共感いたしました。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。



**********

☆「お叱り」 社不さま

社不さま、こんにちは。
御投稿ありがとうございます。

逆説的な視点を貫きながら、自由と反抗の精神が鮮やかに描かれていると感じました。
後ろ向きに歩くことを選び、流されることを拒む姿勢が、詩全体を通じて力強く響きます。

 欲しいのは 後ろ向きで歩くコツさ
 流されるのは 楽だからつまらない

この冒頭の宣言は、世間の常識や流れに抗う俺の心情を鮮烈に表現していますね。

「黒い目より白い目」「線より点」「卒業より入学」という対比は、既存の価値観をひっくり返す独自の視点を際立たせ、読者に新鮮な驚きを与えます。
「砂漠では電柱を探す 」俺は、無味乾燥な世の中で、人とのつながりよりも「点」として孤独な俺を貫こうとするのでしょう。

 そして母さんに叱られる
 そして先生に叱られる
 そして父さんに叱られる

繰り返される「叱られる」というフレーズは、周囲の期待や規範との衝突を象徴しつつ、どこかユーモラスな皮肉めいた響きを持っています。
叱られながらも、お叱りを嘲笑い、自分の信じる道を進む俺の不器用な強がりが印象的です。

 後ろ向きで歩く俺を見かけたら
 誰か叱ってくれないか

最後のこの願いは、単なる反抗ではなく、他者とのつながりを求める小さな叫びのようにも感じられました。
旅の中、広すぎる世界を、あえて後ろ向きに歩く姿は、自由と孤独の両方を抱える人間の複雑な心を、象徴しているように感じました。
常識を逆転させ、自由を追い求める心情を鮮やかなイメージとリズミカルな言葉で描いた力作ですね。

はじめての方だと思われますので感想のみで失礼いたします。
また、お書きになってみてください。
ありがとうございました。



**********

☆「いま ここ」 人と庸さま

人と庸さま、こんにちは。
御投稿ありがとうございます。

刹那の瞬間と自己の存在を静かに見つめる詩ですね。
シンプルな言葉、リズミカルな呼吸のカウントの中に、深い内省と普遍的なテーマを織り交ぜられ、心に響く一篇となっているなと感じました。

 いま
 ここ
 よこたわる
 わたしのじつぞんもよこたわる

この冒頭の簡潔な表現は、「いま」「ここ」という瞬間に自己を重ね、存在の儚さと確かさが同時に捉えられています。
横たわるイメージが、静けさと内省の雰囲気を伝え、詩全体の基調を築いていますね。

 こきゅうをかぞえる
 1、2、3・・・
 「いま」にわたしをつなぎとめ
 「ここ」にわたしをかきしるす

呼吸を数える行為は、日常のささやかな動作を通じて「いま」「ここ」を意識するわたしの姿勢を象徴しています。
この繰り返しが、過去や未来から切り離された「現在」の純粋さを際立たせ、読者にも静かな気づきを与えます。

「きづかれにくいが たしかにある」という詩文は、存在の微妙さと重みが表現されていますね。

 おもいきってひっこししても
 そこが「ここ」にかわるだけ
 「いま」はいつでもそばにいる
 7、8、9・・・

「ここ」がどこであっても「いま」と共にあることが簡潔に捉えられています。引っ越しで場所が変わっても、新たな「ここ」が生まれ、「いま」が常に寄り添う⋯この流動性と不変性が、呼吸のカウントとともに静かに響き、存在の連続性を美しく表現していると思います。

 ここにはだれもいないから
 わたしはわたし
 すぐれていても
 おとっていてもいいわたし

この連は、自己肯定の清々しい宣言として心に残ります。他者の視線から解放された「わたし」の自由さが、シンプルながら力強く描かれていると思います。
最終連で描かれる電気のスイッチを入れたり切ったりす る日常の動作は、明るい自分も暗い自分も受け入れる柔軟な心を象徴し、詩に穏やかな受容の響きを与えているようにました。


 10までかぞえて またさいしょから

最後のこの行は、呼吸のカウントが繰り返されるように、人生の瞬間が循環し続けることを示唆しているように思います。
シンプルな日常の中で「いま」「ここ」を生きる姿勢が、静かで力強い余韻を残します。
瞬間と自己を丁寧に捉え、日常の動作を通じて普遍的な存在の美しさを描いた素晴らしい詩だと思いました。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。


**********

以上、4作品、御投稿いただき、誠にありがとうございました。
それぞれに、素晴らしい作品でした。
十分に読み取れていなかった部分も多かったかと存じます。
読み違いはご指摘いただけたら嬉しいです。
厳しい残暑が続いております。
皆さま、くれぐれもご自愛くださいませ。

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top