カッコウの餌食だ 荒木章太郎
俺のはしたない記憶など
見えぬ鳥どもの
カッコウの餌食だ
俺の独りよがりの夢など
聞こえぬ鳥どもの
カッコウの餌食だ
小さきものに食われる
惨めさよ
巣に残ったのは
我が子ではなく
背をそらし
口をひらき
もっと、もっとと
餌をせがむ影
格好ばかりの俺は
落とされたものに
気づきもしない
カッコウの餌食だ
親代わりの俺も
孤児も
欲しがってばかり
欲しい 惜しい
いと惜しい
惜しくて悔しくて
愛おしい
愛おしさを捧げるほどに
この身は空にならず
むしろ満ちていく
捧げるたびに
形はやわらぎ
満たされる
捧げることで
生きている
——もはや餌食ではない