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スレッドNo.6245

もぐらの詩  上原有栖

人から見れば
ちっぽけなもぐらは
湿った大地をゆっくり移動する

やわらかい土を黙々と掘り進むうちに
長く伸びた生活痕が
ずっと後ろまで続いていった
ぽっかり空いた暗いトンネルでは━━
 
 頑固な粒ぞろいの小石がぶつかってくる
 (通り道でいつも邪魔だから困ってしまう)
 腐葉土のホテルはふかふかに発酵していた
 (食事と寝床はここに決めている)
 濡れたティッシュが鼻先を少し湿らせた
 (誰かの涙が染み込んでいたのかも)
 銀色のお菓子の包み紙は誰が落としていったの
 (まだ優しくて甘い香りがしたよ)

もぐらとは
土のなかをもぞもぞ動く
いつも腹を空かせている小さき生き物
前へ前へと 開いた手で器用に掻き進むけれど
掘れば掘るほどに腹が空いてしまうのだ
このまま死にたくないから
餌のミミズを探して穴をもっと深くした

 人が生きているのは土の上
 モグラが暮らすのは土の下

立場は違えども 緊張に晒されている
それぞれの場所で生き抜くために
今日もお互い もがき続ける

*********
(補足)
・もぐらは大食漢。毎日、体重の約半分にあたる餌を食事として摂らなければいけない。
12時間以上食事をしないと餓死してしまうとも言われている。

・もぐらは縄張り意識が強い生き物である。2匹のもぐらが出会うと喧嘩が始まり、負けた方は住処から追いやられ食事が出来ずに命を落としてしまうこともあるという。


 
 
 

編集・削除(編集済: 2025年09月27日 17:35)

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