明月 荻座利守
淡い雲間に浮かぶ
明月よ
お前の白い円相は
いにしえより
この地に住む数多の人々に
愛でられてきたが
私の眼には
お前の白さは
孤独の光のように
映ってしまう
それは
私の心の奥底に
長い月日を経て
万年雪のように積層した
孤独が潜んでいるからなのか
それとも
遥かな太古に
強大な力により
煮えたぎるこの地から
引き剥がされたという
お前の出自を聞いたからか
漆黒の空に浮かぶ
明月よ
冷たい虚空を廻り続ける
お前の光と存在は
時に生命の誕生を促す
躍動への賛歌となり
時に深い悲しみを癒す
慰めの灯となる
されどお前は
僅かずつながらも
この地より遠ざかりつつあり
いずれ己に訪れるであろう
終焉への宿命を
その白い光を以て
顕しているのか
孤高に地を見下ろす
明月よ
せめて
お前を見上げる今宵は
内より滲むが如き
私の朧な寂寥に
静かに寄り添っていてほしい