青葉の季節 上原有栖
青葉踊る新緑の木々たち
差し込むみどりの木漏れ日のなかを
身体全てに光を浴びて歩いている
わたしの顔 手 胴体 反射する瞳の奥までも
青葉のみどりに染まった
いまわたしは揺れる葉の音と光と混ざり合い
みどりいろの一(いち)なるものへ
森のなかの道はここからずっと真っ直ぐに進む
整えられた遊歩道の先は出口まで続いている
決められた道程を進めば終わりまで無事たどり着く
人の生き様は道にも喩えられるけれど
この道のように分かりきったものではない
くねくね曲がり 別れてはまたひとつになり
途中で行き止まり
引き返さなければいけなかったり 迷う
ここを進み続けても大丈夫なのか迷い続ける
そんな道の途中 森の中で見かけた少女たち
ふとした拍子につむじ風がヒュルルと吹いて
前を行く少女たちのスカートがふわりなびいた
集団は歓声を上げながら青葉の森を
騒がしく駆け抜けていく
大人がどこかに忘れてしまった幼さを
お揃いの通学カバンに詰め込んで
少女たちはこの瞬間(とき)青春を謳歌しているのだろう
きらきら輝く横顔にわたしは青い若葉の姿を見た
思わず声が漏れる
弾ける若さは力なり
瑞々しい青さは無敵なり
そして透き通る可愛らしさは正義なり
少女たちは大人に隠れて夢を見る
甘くて苦い青葉の季節
乙女でいられる瞬間は思っているよりずっと短い
その日々を同じように過ごしてきた私から
一つだけ 教えてあげる
大人も隠れて夢を見ているのよ
それが分かるのは あなた達が大人になった頃
青葉の森のなかを歩き続ける
舗装された真っ直ぐな道を
曲がりくねった人生に沿って歩いていく
青葉の時は過ぎ去ったけれど
まだわたしの道はこれからも続いていく