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スレッドNo.6301

りんご  相野零次

生まれたてのりんごを齧って僕も君もご満悦
生まれたてのりんごは初々しくて恥ずかしがっていたけど
そんなことは関係なしに一番にかじりついたのは僕だった

この世界のイルカの好物はりんごで君から与えたりんごで
イルカは見事なショーを見せてくれた

世界の中にりんごがあるから世界が齧ったりんごの隙間から
朝焼けが見えて神様がそこから覗いているような厳かな気持ちになった

りんごのある世界の僕とりんごのない世界の僕がお互い見つめ合っている
なにもかもがおなじに見えて少し違うその違いは今から数十年後にわかるかもしれない
わかったとしても気づかないほどの違いだろうからあまり意味はない

君にとってりんごは重要だ 君の好物はりんごだから
りんごは甘いか辛いかりんごを食べる前の君にはわからない
君は不安がっているが結局思い切ってかぶりついた
それはとても美味しいりんごだった
君は喜んでそれを平らげ学校へ向かう 今日のテストの結果はきっと良いだろう

世界は君にはやさしくて僕には厳しいようだ
僕の齧ったりんごには虫食いの穴があって
そこから虫が顔を出していた
僕は顔をしかめてりんごを放り投げた
ゆっくりと放物線を描いたりんごは生ごみを入れるくずかごにすとんと入った

僕は世界を少し呪わなければならなかった
そのころ君はテストの結果がよかったらしく神様に感謝していた

世界がりんごを好きなのか嫌いなのかはどちらの可能性も秘めているとしか言いようがない

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