点火のとき 光山登
底なし沼のような公園の砂浜の上で泣きながら座り込んでいた。
僕は今、
人生の砂漠に焼け焦がれされて、
皮膚がじゅくじゅくとただれはじめていた。
僕に課せられた業火の重荷を感じていた。
もう来なくていい、
鬼火のような閻魔の一言が、
永遠に消えないロウソクの火のように、
僕の脳内で燻り続けていた。
僕はほんとうに存在するのか、
僕の見ているものは本当に他の人と同じなのか。
物思いを火花のような歓声が打ち破った。
黒点のような人だかりができていた。
青年がギターを片手に、
燃え盛るように熱唱していた。
熱気が広がり、歓声は花火大会のように大きくなった。
僕は生まれてはじめて真の意味で生きている人を見た。
記憶が火炎放射器の放つ炎のように溢れてきた。
仲間とバンドを組んでいたこと、
ロックスターを夢見ていたこと、
夢を諦めて就職したこと。
僕は聖火リレーのランナーのようなダッシュで部屋に引き返すと、
押し入れにしまっていたあざやかな赤いギターを取り出した。