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スレッドNo.632

8/30〜9/1までのご投稿分の評と感想です。  井嶋りゅう


お待たせいたしました。
8/30〜9/1までのご投稿分の評と感想です。

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「金魚だった」紫陽花さん

紫陽花さんこんばんは。
一連目はとても華やかで美しい様子が浮かんできました。津軽びいどろは私も持っています。(私は青森出身なんです)綺麗ですよね。津軽びいどろの金魚鉢なんてとても贅沢で素敵ですね。その金魚鉢で優雅に泳いでいる美しい金魚たちに目を奪われて何気なく放った彼の一言。その一言から「私」は彼を喜ばせたくて努力を始めるのですね。それはもはや努力という言葉ではなく、自分を喪失してしまうほどの結果になり、愛しいあなたは居なくなってしまいました。この詩は、ここからの展開がとても良いですね。誰とも何にも喋らなくなったのでしょう、言葉を思い出したくてコールセンターで働き始めます。言葉とコールセンターってあまりイコールで結びついていなかったんですが、この詩を読んで、ああ確かにそうだよなあ、と思いました。そして最後から2連目、心が痛むほどの相談がやってきます。「私にちょうどいい温度は何度ですか?」と。この連は胸にささりました。急に記憶が巻き戻るような錯覚を起こしました。自分を無くすということは、こういうふうに自分のことがわからなくなるということ。そしてそんな初期症状が実は私にもあるかもしれないということに気づかないこと。そんなちょっとしたこわさも、この詩から私は感じました。戒めのような意味合いも感じられ、襟を正すような気持ちにもなりました。長くなりましたが、今回は書き方のお話をしますね。意味はわかるので今回はセーフなのですが、金魚目線なのか、人間目線なのかをもう少しはっきりと分けて書いたほうが良いかもしれません。金魚として書いてあるような、金魚に憧れた自分として書いてあるような、曖昧な表現がいくつかありましたので、次回作へのアドバイスとさせていただきます。今回は佳作一歩前でしたね。良い作品でした。


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「合わせ鏡」cofumiさん

cofumiさんこんばんは。
とっても良い作品でしたね。人間の、特に現代に生きる者の弱さや虚しさ、エゴ、孤独など、上手にcofumiさんなりの言葉で表現されていました。最後の連は愛について書かれているのですが、この詩はそもそも全体的に愛の不足が招く物足りなさのような、焦燥感のような、他人よりも自分をどんな時も優先するような、それでいてそれに嫌悪している自分を俯瞰してみている。他人に見せる自分を上手に演出して、一瞬の満足はしても本当のところは幸せを感じることが出来ない。こういう気持ちを感じて生きてらっしゃるかたは、実はとても多いのだと思います。色んなものが発達して進化して便利になった現代にぴったりの心の声だと思いました。「〜さ」の表現が良いですよね。リズミカルで、ネガティブなものが少し軽くスッと入ってきますね。8連からなる詩ですが、一連ごとに心に響いてきて、最後は、愛し方から教えてほしいのだと、とても切実な思いで終わっていて、つまりは愛なんだよなあ、とつくづく思うことが出来る、この詩はパーフェクトでした。佳作ですね。


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「正義とは」秋冬さん

秋冬さんこんばんは。
100人いれば100通りの正義があると思っています。正義って厄介だと私は思っていて、本人がその正義を信じてやまないので、争いやいさかいが起きる。Aも正義だけどBも正義だ、となると収拾がつかないですもんね。小さなことから大きなことまで、個人から集団に至って、果ては戦争が起きることも辞さない。そんな小さな火種を上手に書かれていると思います。3連目、彼と彼は仲良しでも彼らの正義は不仲であるから、4連目、武器ででもあるかのように振りかざして時に人を切り捨てる、と。ここはとても上手に表現されているな、と思いました。そしてもっと良かったのが、最後から2連目の、正義と言いながら実は欲望であったのだという結末。欲望と欲望の戦いであったのですね。正義という言葉にすり替えて我を通そうとしていただけなのだとわかった瞬間の絶望。そう、履き違えていますよね。当人すらもしかしたら気づいていない事実かも知れないですよね。そうして戦いは終わらない。何もこの二人が特別なわけではなく、もしかしたら私たちも似たような過ちを犯しているかも知れない日常を、言葉の足し算引き算を上手に調整しながら書いて下さっていて十分佳作なんです。が、欲を言うならもうひと展開、実はほしいんですね。あるいは、もうひと潜りといいますか。秋冬さんの行分詩の場合、それがあるともっと生きてくるような気がしました。現状佳作です。それから、散文詩もまた書いてみてくださいね。


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「解夏」暗沢さん

暗沢さんこんばんは。随分お久しぶりのような気がいたしますね。お元気でお過ごしでしたでしょうか?
面白い作品ですね。「かげおくり」というものが本当にあるのかどうか、あるとしたらそれは子どもの遊びみたいなものなのか?この「かげおくり」のやり方が独特で、瞬きせずに数を10まで数えたら、行っている者たちの影が天へと昇っていく。そういうふうに言われている、という解釈で宜しいのでしょうかね? 物語はしかし、影だけが落ちてきて日向にくっついた。根っこの真似して地を侵食していく。私はどんどん地が黒くなっていくイメージを持ちました。黒くなって暗くなって誰の影なのかわからない大きなものが自分の足元から後ろへ広がっていて呑み込まれていくようなイメージ。かげおくりを夏にやるときは気をつけないと!みたいな言い伝えまで聞こえてきそうな想像をしました。言葉遣いも面白いです。作風に合ってました。タイトルですが、「解夏」も素敵なんですが、「かげおくり」のほうがよりこの詩にすっと入っていけそうな気がしました。また句読点ですが、数を数えるところ以外はなくてもよいかもしれませんね。少し分かりづらい表現のところもありましたが、これはこれで良かったと思いました。おまけの佳作ですね。

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「感性のピース」松宮定家さん

松宮定家さんこんばんは。初めてのご投稿者さんですね。井嶋りゅうと申します。どうぞ宜しくお願いいたします。
本がお好きなんですね。本に対する愛情や愛着をとても感じられる詩ですね。私も本が大好きです。本を読むことは旅に似ているような気がします。自分の知らないことや知らない場所知らない感情など、ここにいながら体験することができます。時には共感し、時には考え込み、この詩のように作者も読者も生きた証を刻み込む。本の中の彼や彼女たちが読み手の中で生き続けることもあるかもしれませんね。本を読み終わって本棚にその一冊を差し込む時、この詩のように考えたことはとても素敵なことだと思いました。本棚を額縁に例えているところも、本を尊重している気持ちが伝わってきて気持ちが良かったです。素敵な詩でした。また書いてみてくださいね。


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以上です。
ご投稿ありがとうございました。
今夜は中秋の名月。
月がとっても綺麗ですね。
誰かに伝えてみるのも素敵だと思います。
またどうぞ宜しくお願いします。

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