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スレッドNo.6338

感想と評 10/3~10/6 ご投稿分 三浦志郎 10/13

1 上原有栖さん 「青葉の季節」 10/3

モチーフは同じ森ですが、前回の奇譚的に対して今回は凄く正統的なセンで書いています。
コントラストといった効果も意図したかもしれない。「凄く正統的」と書いたのには、ちょっと裏があって、逆に言うと、それだけ、ありがちなモチーフ、テーマ、背景、場面、登場人物、技巧なんです。つまり、目新しいものは特にない。よくあるタイプの詩である。しかし、それだけで片付けていいものでしょうか?そうはいきません。僕が推測するに、今回、正統的なるものを、ご自分なりに把握、検証、吟味、復習され、作品として再生してくれたものと考えます。それが証拠に、その一字一句に、一点の曇りもなく解釈不能もない。その詩句は全て整理整頓され、その文脈は親切すら感じさせます。話柄は自分と相手(少女たち)のことですが、その事情話がどちらにも偏ることなく、風景の中に自然に溶け込んでいる。その語るところは両者にとっての普遍。全体に大人しい詩ですが、ほのかに主張を感じたのは「大人も隠れて夢を見ているのよ/それが分かるのは あなた達が大人になった頃」―ここですね。ああ、いいですね。この考えの方向性は両者の普遍に向くことができる。どうやら、結論が出たようですな。評者の結論も佳作としましょう。


2 松本福広さん 「なにものどんぐり」 10/3

この詩の発想と骨子は、あのことわざ「どんぐりの背比べ」に多くを負っている気がします。
変わりばえなく、抜きん出た者のない大衆社会、自分も其処に存在するといった自嘲的認識が詩行の多くを覆っています。かなりの長さの詩なので、どんぐり的立場からの社会諸相、自分のありようは、ほぼカバーされているように思います。それと、こういった主旨をこういった語り口で書くのも悪くないですね。もうひとつ見ておきたいのは、「箱庭」という感覚です。これも抜きん出たい、自分らしくありたい、といった指向からすると、足枷になるでしょう。
この詩は悲観部分が多いのですが、それだけではない。状況にもがきながらも、自分らしく、一歩上を行こうとする意識は充分感じられるのです。そこは充分読み取っておきたいです。背景がどうであれ、人間、最低、気概だけは持っていたいもの。甘め佳作です。


3 多年音さん 「台風出勤」 10/3 初めてのかたなので、今回は感想を書かせて頂きます。

過去作をいくつか読み、傾向概観させて頂きました。日常性にある”隙間を上手く狙って来る“。
そういったことをカジュアルでセリフ寄りの文体で書いて来る。結果、軽快でユーモアを感じさせますが、いっぽうで心理にやや屈折もある。そういった中にも深いものは差し出される。サイズはJUST SIZE。これは長短どちらにも向かえるスタイルな気がします。もちろん内容優先で、サイズは二の次になりますが、どちらかというと長めに書くのをお勧めしたいです。これ以上短くなると、話はちょっと違って来る気はしてます。

さて、それら踏まえての今回です。冒頭から3連。こんな台風の出勤に、こんな事思うヒト、誰もいませんよ(笑)。そこが凄い、そこが、この日の、この詩の”隙間狙い“ですね。次の連では一転、ライブ実況中継です。ひっくり返った奴、じいさん、には悪いんですが、ちょっと面白い連です。「真剣~ユーモア」といったところか?最終部分は、動物には無い、人間の意志への賛歌であり鼓舞でしょうね。面白い作者さんかもしれない。また書いてみてください。


4 トキ・ケッコウさん 「あのひと」 10/4

登場人物は三人と見ます。まずタイトルの「あのひと」。次に作品語り手の「わたし」。そして「わたし」が話しかける「あなた」。
あのひとは、どうもちょっと“困ったひと・めんどくさいひと”のイメージがつきまとうかのようです。
で、注目すべきは「もういいんじゃないですか?」以降、詩の半分を使って「あのひと と あなた」
の関係について示唆しています。当然、「わたし」も深く関わっているからこそ「わたしに預けて」と言えるのです。解せないのは「お代は要りません」です。このトライアングル状態をどう解くか?
なにか三角関係を匂わせる気味はありますが、そのあたり、よくわかりませんでした。ただし、総体のトーンとして、「切なさ、やるせなさ、疲れ」のようなものは読み取れるのです。初めての評価ですので、佳作二歩前でお願いします。


5 こすもすさん 「もやもや」 10/4

もやもやは病気の一種でもあるそうですが、ここではその方面は除外します。
タイトルのように、なんとも、もやもやした詩なんですが(失礼!)、

「もやもやとうまくつきあうこと」

此処がこの詩の最大ポイントと思われます。最重要事項、最優先事項、即座判断事項でない限り、
けっこうありそうな話ですし、無理に黒白をつけない方が、むしろうまくいくケースも少なくないでしょう。何故でしょうねえ?
おそらく物事に、長所・短所、裏表、カウンター(意味:逆の、対抗の)などの両面性・多面性が余計もやもやさせるのでしょうか。
まあ、この詩のようにあまり難しく考えないほうが、精神衛生上良いと思いますね。「何か事例や具体例をー」といった所感は書こうと思えば、書けるのですが、―そして、そう思う人は必ずいるはずですが―、今回はやめておきましょう。
僕は必ずしもそうは思わないからです。特にこの詩の場合、例が思いつかないからこそ、もやもやしている要素はあるでしょう。
さりとて、僕も読んでて、ちょっともやもやして来ました。評価もやや、もやもやして、佳作一歩前で。


6 相野零次さん 「りんご」 10/5

たとえば、相野さんの家の台所かどこかに、たまたまりんごがあったのでしょう。相野さんは手に取り、じっと考えます。詩ができるまでにさほど時間はかからなかったでしょう。すでに意味・解釈を越えていますが、形式上、ストーリー上の法則性のようなものはあって、それが、お相手としての「君」であり、背景としての「世界」です。この二つがないと、さすがに詩は成立しにくかったと思う。
これらを両核として、“感性飛ばしフレーズ”で繋いでゆく。どんなスタイルの詩でも拠り所は欲しい、といった趣きでしょうか。
うーん、こういった詩の評価は本当に難しい、正直、わからないんですよ。
やや、もやもやして佳作一歩前で。


7 光山登さん 「点火のとき」 10/5

前半は自己の悲哀が隠喩風に語られます。後半は「物思いを~」以降、具体的な場面によって転回されます。ここでは主に直喩が使用されています。全詩行が火のイメージを持ってタイトルの傘下に入っています。その統一感が良いと思います。終連がタイトルに呼応するものでしょう。
「再点火」といったところでしょうか。いいことです。「あざやかな赤いギター」もタイトルに似あいます。強いて言うならば、「のような」「のように」の字句が、目立たないながら、わずかに多い気はしました。推敲時に調整することをお勧めします。始めの評価は佳作二歩前からお願いします。


8 静間安夫さん 「めぐり逢い」 10/5

ああ、この古書店、憶えてます。以前の作品に登場しましたね。
構成に沿って見ていきます。「この誤解ではなかろうか」までは、まずまず一般論として共感できます。この詩の本題に入って来るのは「無論、書籍も~」以降と考えられます。従って、それ以前は少し省略的に書いてもいいと思います。さて、その本題です。こちらも、まず一般論を掲げて、だんだんと個別性(その人の個人事情)をあてはめていく。この手際でいいと思います。メインになる詩への充分な助走になっていると思います。詩はゼウス像出現の驚きと書物を通じての絆を感じ、大いなる感動を謳い上げています。壮大な詩でありました。この作品はこの詩を以って結論と見ていいでしょう。さらに想像をたくましゅうすれば、この詩こそ個人の名を借りた静間さんの詩であるでしょう。たとえば、この詩のみ、ポンと置いたのでは、読み手は少し戸惑うでしょう。その助けとしての散文部分は必要になってきます。背景解説ですね。さらには、やはり文学的香気が出てきますよ。ただ、サイトの性格上、詩が主になる事は条件になります。佳作です。



9 晶子さん 「向日葵」 10/5

向日葵も品種様々で、小さいものから身の丈2ḿ以上になるものもあるようです。この詩の主人公向日葵は大きいほうかもしれません。でないと、初連のような感慨は持ちにくいでしょうから。
「昔日(せきじつ)と現在(いま)」―その栄光と悲哀に、今さらながら気づき驚く。そこに純粋と謙虚を見ておきたいと思います。前連、後連微妙に違いはありますが、どちらも趣き深い。およそ花の盛りを謳歌する詩あまたあれど、このように花の終わりを詠う詩は貴重にして、よりいっそう趣き深いものがあります。そして、けっして卑下していない。むしろ「今も好きよ」と言っている。自己愛とは多分に胡散臭いものですが、この詩に見るそれは、全く清廉にして気高いです。憧れます。
僕個人が感じたことは寓話としての「悔いない老後」そんなイメージなんです。 佳作です。
(あーなんだか、すがすがしいー)。


評のおわりに。

今年はなんやかんや、「暑い」と言われながらも、涼しくなるのも、けっこう早かった気がする昨今ではあります。
とりあえず、半袖と長袖のチェンジか?  では、また。

編集・削除(編集済: 2025年10月13日 18:18)

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