午後の光の中で ゆづは
砕けた背骨を抱え
彼女はひとり
病室の白すぎる天井に
何を映しているのだろう
間仕切りカーテンをそっと滑らせ
私はマスクの下で
蒼い吐息を呑み込む
窓辺に宿る 彼女の幽かな息遣い
それは 冬を待つ静寂の重み
彼女の輪郭は滲み
霧のように ベッドに沈む
目を合わせると
口元に灯る小さな翳りが
笑みと苦痛の間で揺れる
細く乾いた指先が
シーツの上を探る
まるで 透明な水を
掬い取ろうとするかのように
ブラインドの隙間から
午後の光が差し込み
薄れゆく頬を滑り落ちる
そのとき
私の影が 彼女の胸元に落ち
まつ毛が かすかに震えた
声は 喉の奥で崩れ去り
ただ静寂だけが降り積もる
私は光に背を向けて
音を立てぬように
ゆっくり カーテンを閉じた