銀杏 晶子
私をお受け取りください
春の柔らかい葉の頃も
夏の私の陰も
秋の金色に降る私も
あなたの周りを舞い
微かに触れて散ることを
私は望む
ただ静かに立っていた
根の周りの土は暖かかった
小さな虫達が蠢いていた
大地の温もりと月が海を泡立て
水はどこかに急ぐように
結んでは離れて巡った
天と地の間
泣いていたのは誰
ちはやぶる
誰かが四股を踏んだ
龍笛の音が駆けた空
なゐ振る
慟哭が聞こえる
その中に立っていた
萬のものを種として言の葉が生まれた
生を得て空に帰するのは必定
ただ泡沫の世に言の葉だけを置いていくことを許して欲しい
夜明けが近づいている
何度芽吹き
大樹になろうとも
ただ静かに
誰も巻き込まず
倒れることを
私は望む
ただ雪のようなさびしさと
ともにゆくことを
私は望む