おじさん 荒木章太郎
真夜中の最終電車
時代遅れのおじさんが
正義をぶちまけていた
酒の匂いが混じっていた
おじさんは
一括りにされないために
自らを三つに割って
三段論法で塗り固めていた
嫌な匂いを撒き散らしていた
認知は歪み
人の話を聞く耳を持たない
周りの顔が次々と引いていく
逃げるように隣の車両に移ると
私からも同じ匂いがした
もう紛れることはできない
車内に広がる清潔な空気が
おじさんを焙りだしていた
肩書きと資格と
マイナンバーカードを
隣の座席に置いてきた
自信を失った私は
おじさまになって
隣の車両に戻ろうとした
一括りにされないためには
群れなければ良い
おじさまにならなくても
名を名乗れば良い