秋の葉桜 つる
一枚の葉が
それは唐突に
私の目の前で秋という宣告をするかのように
地面にパタリと落ちた
嗚呼 まだ黄色い葉じゃあないか
葉桜を見上げると
緑色の葉がまだ多くひしめき合っていて
黄味掛かった色の葉は少なかった
秋の入りは緩やかなどではなく
私が思うよりもその季節の変化を
厳然と
かつ落胆的に表出させているのかも知れなかった
気付いた時には秋
アスファルトの地面に落ちたその葉は
収まりの悪く
決まりの悪いように
人工物とのコントラストを見せている
本当はまだ枝にくっついて
徐々に枯れてゆき
充分に赤味の色を付けたところで
緩やかな秋風に誘われるようにして
力なく枝から離れて
はらはらと落葉したかったろうにと
そしてそれをさも情緒的な美しさとして
私は見とれたかったのだけれど
実際は
若きその一枚の落ち葉は
私の心に秋という傷痕を残した
死が唐突であるかのように
生が奇跡的であったかのように
なあ いつまで見つめていても仕方が無い
ぶっきら棒になって
私はその場を振り切るようにして
自転車のペダルに足を掛けて漕ぎ始め
ようようよくも立ち去ったのだ