二人乗り紙飛行機 トキ・ケッコウ
あの人たちはひとつの紙飛行機に乗っているのだ。晴れていればいいが雨もあるから二人とも落ちるかもしれない。そこでくだらない子供に拾われ折り直されてしまってもう飛べなくなるかもわからない。しかしそんなことはあの人たちにはきっと織り込み済みなのだ。だからなんとも思わないふりをして飛ぶのだろうしカラスやスズメやそういった羽のあるやつらがちょっかいをだしてくることも時にはあるだろうけれどおそらくそれもあの人たちにしてみれば想定されたことなのだ。ただ。
もどかしいのは…… あの人たちがどこまで二人で飛べるのかではなくどのタイミングでヒトの手に渡って捨てられてしまうかということだ。── こればかりは飛んで行かなければわからないことになると思う。でも。
あの人たちは飛ぶし仮にどちらかが力尽きて飛べなくなったとしても互いの相方を背負って飛んで行く。それだけははっきりしておりそうやって二人ひとつの紙飛行機として飛んで行きやがて降りることになるのだろうと信じる。ところでそこは目的地ではないし終点でもない。補給地でも経由地でもない。── ではどんなところだろう。
地平線いっぱいに広がった、そこはおおきな一枚の紙なのだ。…… もう誰も覚えていないとされる場所でもある。そこでようやく紙飛行機に乗るのをやめたあの人たちは。
ふたたび、二人それぞれの紙へと切り分けられるのだ。