MENU
1,552,104

スレッドNo.6417

足跡  人と庸

名前のない真夜中に
とつぜん窓の外が光った
その次に来るものを待つ
待てるほどに
わたしはこれまで天の災厄からも
人のかなしみからも遠いところにいた

その遠さを洗い流すように
こんどは激しい雨が

道は川のようになっていようか
枝わかれの先の枝わかれへと
水は無為の意志で運ばれる

これまでわたしを運んできたものは
わたしの意志にほかならないが
今このときは
その道程が洗われることを望むのだ

洗われると感じるのは
わたしが天の災厄からも
人のかなしみからも遠いところにいるからで
雨は実際には
おのれの足跡をくっきりと残す

また光った
その数秒後

天から咆哮が降ってくる

そして
天も山も街もその境界を失くし
ひとつのおおきな雨になる


街は濡れそぼち
まだ色彩のもどらない朝
雨は白い煙となり
黒い山を這い天に還る

今このときは思うのだ
わたしたちは
世界を借りて生きている

洗われたはずの道に残されているのは
雨だけではない わたしの足跡
この足跡だけは
借り物ではない わたしのものだ

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top