一人になるのが怖いだけです 荒木章太郎
理屈はあとから
追いかけてくる
うそ大袈裟は
君を喜ばせたい
その気持ちが
強すぎたのです
理路整然としているところが
兵士にみえて怖かった
規則正しい足音が
耳から離れず辛いのです
正義を振り翳す拳の影が
胸に刺さって痛いのです
昔、父に騙されて
自衛隊に入れられて
逃げだした時の傷跡です
腕っぷしが弱いから
口を使って生き延びました
権力の前にひれ伏す
理屈が言い訳となり
僕の体は逃げていきます
反面教師の役を演じて
迷彩服を纏いカッコをつける
本当は疲れて逃げたいだけです
鋭利な論理で
頭切り落とされても
胴だけ残して逃げられるよう
足腰だけは鍛えてきました
頭が落ちれば
どうにもならない
そんなことは分かっているけど
相手を困らせたところで
一人になるのが、ただ寂しい
それだけのことです