秋月夜 喜太郎
障子を通して部屋を仄暗くする月明かり
花瓶から一輪の露草を手に取り
畳の上 横になりそっと傍に置く
浴衣の裾が少しはだけて
湯上がりの赤みを帯びた足があらわになる
少し涼しいと感じる
仰向けになり暗い天井を眺めて
露草を胸元に置きなおす
あなたが私に似ていると言った花だから
愛しくて仕方ないの
このまま花に抱かれたなら
私は息さえも忘れてしまっていいのに
逢いたい
この火照りはあなたしか癒せないのに
それでもこの寂しさは心の中を愛で満たしていく
満たされないのはこの身体だけ
なんて卑しい女
なんて素直な女
秋の夜は長いのね
秋の夜は切ないね
想いを寄せるには素敵すぎる夜だから
そっと露草に両手を寄せる