遠い出口 ゆづは
手のひらを埋めるほどの薬袋を抱える
二ヶ月に一度の定期検診の日
診察の長い順番を待つ
誰かの目が ちらりと
私を撫でるように通り過ぎる
テーブルに飾られた造花さえも
氷柱の視線で
私を射抜いてくる
気にし過ぎだよ──
耳元で誰かの声が響いた気がして
それは 自分の声かもしれない
もう慣れたはずなのに
震える指先を隠しながら
一歩を踏み出せずにいる自分が
痛いほどにわかる
薬袋は次第に重くなり
手は痺れて
私の影は足元の床に沈んでいく
遠い出口が滲んで揺れている
その先へと続く道は
どれだけ歩けば
辿り着けるのだろう
同じ場所に立ち尽くし
つま先が冷たくなっていく
扉の開く音だけが
私を待っている──