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スレッドNo.6443

遠い出口  ゆづは

手のひらを埋めるほどの薬袋を抱える
二ヶ月に一度の定期検診の日

診察の長い順番を待つ
誰かの目が ちらりと
私を撫でるように通り過ぎる

テーブルに飾られた造花さえも
氷柱の視線で
私を射抜いてくる

気にし過ぎだよ──
耳元で誰かの声が響いた気がして
それは 自分の声かもしれない

もう慣れたはずなのに
震える指先を隠しながら
一歩を踏み出せずにいる自分が
痛いほどにわかる

薬袋は次第に重くなり
手は痺れて 
私の影は足元の床に沈んでいく

遠い出口が滲んで揺れている
その先へと続く道は
どれだけ歩けば 
辿り着けるのだろう

同じ場所に立ち尽くし
つま先が冷たくなっていく
扉の開く音だけが
私を待っている──

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