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スレッドNo.6444

椰子の木  aristotles200

祭りの後、嵐の前
物語は続く
明日のことは誰も知らない

大海原に浮かぶ
一本の椰子の木がある
あてもなく彷徨う
緑と土の記憶は遠ざかり
潮風と波の音が満ちてゆく

穏やかな海を半月が照らす
時が止まったかのように
椰子の木は浮かぶ

遠い西の空には
黒雲と雷光
嵐の気配、雨の匂い
波はうねり立ち
暗闇の海の上を
何処かに運ばれていく

嵐のあと
辛うじて椰子の木は浮かぶ
渡り鳥が数羽、羽を休ませ
飛び立つ
その重みに耐えきれず
沈みはじめた

椰子の木は
宙を泳ぐように
冷たく、暗い海の中を
ゆっくりと
海底に向かう
弔いのような静けさの中で
旅は、終わりを迎える

軽い音をたて
深海の海底
終の棲家へ辿り着く
椰子の木は、海と溶けあい
朽ちていく

祭りの終焉、嵐の後
物語は終わる
静寂と、安らぎに包まれている

編集・削除(編集済: 2025年11月07日 08:04)

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