鳶(とんび)、高く 肩、ビンと 上原有栖
ピーヒョロロ ピーピーヒョロロ
甲高い声を響かせて翔ぶ鳥たちがいる
僕は砂浜の流木に腰掛けて空を見上げた
江ノ島の澄み切った青い世界には
高い太陽の光を受けて幾羽もの影が
("逆"から見るとまるで黒い十字架にも見える)
旋回している
あれは鳶(とんび)だ
街中の鴉のように此処では厄介者さ
観光客の餌付けによって
今では 上空から手元の飲食物を狙って襲い来る
ハンターになってしまった
ピーヒョロロ ピーピーヒョロロ
この鳴き声は
下界への襲撃の合図か
それとも仲間への情報の伝達か
はたまた下々の我々を見下して嘲笑っているのか
まさに今も砂浜沿いの遊歩道目掛けて
滑空する黒い影が見えた
通行人の悲鳴と驚愕の声がこだまする
見慣れた光景はこの先もずっと続くだろう
人間と鳶の共存はこの街では常識なのだから