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スレッドNo.6449

巨人  相野零次

ある日あるところに
とてもやさしい巨人がいたんだ
とっても大きな手と足と心を持っていて
だれかがこまっていればすぐに助けてくれた
巨人には目も鼻も口もなかったから
どういう感情を持っているのかわからなかったけど
みんなはきっとやさしい笑みを隠しているって
信じて疑わなかった
そんな巨人をある日殺しにやってきた人間がいた
この国は戦争をしていて
敵対国からやってきたヒットマンだった
巨人は誰かを助けることしか知らなかったから
自分が死ぬことがその人を助けることだと思って
大きな心を大きな手で握りつぶしてしまった
殺気立っていたヒットマンは驚いて
しばらくしてからありがとうと涙しながら言った
悲しんだのはヒットマンだけじゃない
みんな悲しんだ
幼いこどもから年老いた老婆までみんな涙を流した
そのとき空から声が聴こえた
みんな悲しまないで
これで戦争が終わる
みんな抵抗しないで
白旗をあげて降伏して
それでもだれも悲しまないように
僕がなんとかするから
それは声なき声として
全員の耳に届いた
この国と敵対国にさえも
みなは驚き
そして感謝した
両手をあわせ感謝の祈りを捧げた
雨が降ってきた
それは巨人を失くした
みんなの哀しみと
明日へと続く希望の涙だった

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