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スレッドNo.6463

The Color of My Night 佐々木礫

何度夜空が流れてきても、それが晴れでも曇りでも、ベッドルームの小窓を開けて、私はあなたの星を見つける。

今朝会社へ行く途中でね、無機質な雨の隙間から、あなたが私を覗いていたの。
あなたが独りなら私は嬉しい。
灰色に光る美しい世界で、赤い大きな傘を差しましょう。
もしも行く宛がないのなら、その傘の下にいればいい。

私の静かな毒。隣家の子どもが笑う声。
グラスの水が綺麗に揺れる。
あなたがくれた白いハンカチ、そこに縫い付けた赤い刺繍の、荒い縫い目が少し綻ぶ。
あなたが二度とここに来ないなら、もう誰もここに呼ばないわ。
季節を過ぎて薄らいで、柔らかな影になったあなたが、ふわりと消えてしまわないように。

暗い寝室の片隅で、
「君となら、黙っているのが怖くない。」
と、あなたが私に囁いた時、何も言わずに寄り添いながら、私はとても怖かった。
あなたの横はとても寂しくて、掠れた声で、羊を数え始めたら、あなたは、私の口を優しく塞いでくれて、一匹だけ静かな眠りに落ちた。
あなたが寂しくならないように、抱き留めることも忘れたまま。

小窓から風が一つ吹いた。
頬を伝う、涙を拭いた白布の、濡れた心臓のほつれた糸が、ふらりと闇へ攫われる。
それは流れ星が消えるように、雨上がりの夜を紐解いた。

編集・削除(編集済: 2025年11月11日 01:54)

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