輪郭のない影 ゆづは
足元に落ちた微かな温もり
それを拾い上げたのは
あなただった
道端に咲く名もなき花に
微笑みかけるその眼差しは
木漏れ日の優しさにも似ていて
ぼんやりとした境界の向こう
透明な指先が触れたとき
ここに私はいたのだと
気づかされた
形を求めることに
意味はあるのだろうか──
あなたの目が問いかける
声もなき私は
無音の闇の中で
滲む月をただ見つめていた
存在とは
誰かの胸に宿る仄かな灯りか
それとも
誰にも見えぬ月の裏側に
隠した心か
輝く世界はまだ私を知らない
けれど あなたの瞳の中で
今もひそやかに息をしている