いつかの星 多年音
痛いの痛いの飛んでけと
空に飛ばしていいのだろうか
痛みが誰かに落っこちて
入ってしまったりしないだろうか
ジャングルジムの下で
片膝を抱えて少年は思う
人に当たらなければいんじゃないか?
そんなに狙いをつけて飛ばせるのか?
分からない
雨に裂かれて分裂するんじゃないか?
大きさが増して帰ってくるんじゃないか?
分からない
不思議に答えはない
そんななぞなぞに
ズバッと閃ける程の齢でもなく
ただ時間が過ぎて
公園にいるのも自分一人になった頃
少年を頭の世界から引き戻したのは
冷たい風だった
少年は気づく
それは砂漠の風だと
霜を越え海を経てきたのだと
近くじゃなくて
遠くへ飛ばせば
そのうち冷たくなるだろう
だから少年は高く高く飛ばした
空に浮かぶ少年の痛みは
今日も綺麗な色に見える