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スレッドNo.6499

無  静間安夫

たとえば
純白の雪原に残された
小動物の足跡

たとえば
月のない夜
山間に浮かぶ
一軒家のともしび

たとえば
静寂の中
はるか遠くから聞こえてくる
渡り鳥の啼く声

小さな足跡も
孤独なともしびも
彼方からの声も
特別な背景なくしては
決して気づくことはない

そう、
真っ白な平原の上でこそ
漆黒の闇の中でこそ
深い静寂に包まれてこそ
それらの「存在」を
認識できるのだ

いや、
もしかしたら
「存在」とは
こうした広大な「無」に
飲み込まれまい、と
必死に抗うときに
はじめて
露わになるのかもしれない

「死」に抗う
「生命」のように

「時間」の腐食に抗う
「美」のように

だから
真実の「ことば」も
虚無の深淵にこそ
存在するのかもしれない

古来
多くの詩人たちが
窮乏と危機に直面しながらも
同胞を励ます詩句を
生み出すことができたのは
決して偶然ではない

編集・削除(編集済: 2025年11月18日 10:16)

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