あかくなるまで さんぷく
耳をかじる霜の声に
白い息で応えてみる
家は眠っている
山は起きている
二つコブを越えた先で
被害者ぶった鹿が鳴く
暖冬で殖えに殖えたそいつらに
ちぇ、と舌うち
誰のせいでしょうね
クマの不眠は
街灯すらない国道を
懐中電灯ひとつで下っていく
5m先でリスがしっぽを振って
白の破線をうろちょろしている
車が来たら、退いたげてね
鼻をつつく木枯らしを
マフラーにもぐって弄ぶ
イタチだかタヌキだか知らないが
もふもふが歩道を走ってる
偉い子だね、お前らは
家がぽつぽつ光り始める
山のシフト 次は小鳥
もう電灯はいらないか
かち、と切って
ポッケに赤い手を沈める
朱色の日が顔を出した