堕天使 喜太郎
不思議な事に
多くの男達の亡骸は
笑っていた………
羽をもがれて
地上に落とされた堕天使
悪魔に恋をし
神の怒りを受け
純白の羽をもがれ
地上へと落とされた
それでもなお悪魔への想いは青白く燃え上がる
人間の男どもの心の中に
悪魔の素質を見抜いた堕天使
それならば悪魔の為に一つでも多くの魂を持って行けば
黒光の羽を与えられて生まれ変われるかもしれない
悪魔の元へ近づけるかもしれないと
一心不乱の笑みを浮かべた
愚かな人間の男どもを
天使の笑みで
虜にして
跪かせて
一つ一つと魂を取り除く
堕天使の美しすぎる微笑みは
男どもの視線と交わるたびに
男どもは身動きが取れず
身震いし叫び続ける
「ああ全てを捧げます」と
男どもの亡骸は全て
微笑みをうかべ
積み重なっていく
堕天使は抱えきれないほどの多くの魂を
悪魔の足下へと差し出す
あなたのそばで支えさせて欲しいと願う
そして黒く光輝く羽を……
悪魔は微笑みながら容赦なく
堕天使の胸に鋭い爪の手を捩じ込み
堕天使の魂を抜き取り喰った
悪魔は悪魔でしかないのだ
取引などしない
堕天使だろうと天使の魂は
悪魔の力を高める
幾千幾万の人の魂より価値があるのだ
胸元を赤く染めた堕天使は
満たされた様に微笑みながら
亡骸となる
ああ あなた様と一つになれたんだと
満たされた笑顔を残して
塵となった