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スレッドNo.6506

11/11〜11/13ご投稿分の感想と評です  荻座利守

11/11〜11 /13ご投稿分の感想と評です。宜しくお願い致します。
なお、作者の方々が伝えたかったこととは異なった捉え方をしているかもしれませんが、その場合はそのような受け取り方もあるのだと思っていただければ幸いです。

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11/11 「The Color of My Night」 佐々木礫さん

今回は初めてなので、感想のみとさせていただきます。
今はいない大切な人への、想いや寂しさを綴った詩ですね。
全体を流れるメランコリックな雰囲気が、その寂しさを映し出していて、いいと思います。
1連目に「あなたの星」とあるのは、その「あなた」が既に亡くなっていることを表しているのでしょうか。そのように受け取ると、2連目の「無機質な雨の隙間から、あなたが私を覗いていたの。」というところからは、思い出の景色や物事から、その人の存在を身近に感じているような印象を受けます。
3連目の「私の静かな毒」とは暗い孤独感を表しているのでしょうか。そのすぐ後の子供の笑い声や綺麗に揺れるグラスの水との対比がいいですね。
そして「季節を過ぎて薄らいで、柔らかな影になったあなたが、ふわりと消えてしまわないように。」という表現に、「あなた」の記憶が薄れてしまうことを恐れる心情が美しく表されていて、秀逸だと感じました。
最終連の「濡れた心臓のほつれた」「雨上がりの夜を紐解いた」も美しいですね。
ただ全体的に、人によっては表現が冗長に感じることもあるかもしれないとも思いました。でもそれは読み手一人ひとりの好みにもよるのでしょう。
とても繊細な感性によって綴られた詩のように思います。それは読み手にも、その感性の鋭さを求めるものでもあるかなと、そんなふうにも思いました。


11/11 「輪郭のない影」 ゆづはさん

まずタイトルがいいですね。これが何を指しているのか明確にはわからないのですが、存在の不確かさのようなことを表していて、それが中盤の「形を求めることに/意味はあるのだろうか」とつながるように感じました。
冒頭の「足元に落ちた微かな温もり」とは何でしょう。道端に咲く名もなき花への優しい眼差しでしょうか。そしてそれが「あなた」の眼差しと同じものだったのではないかと、そんなふうにも受け取れます。
3連目で人との触れ合いを、「ぼんやりとした境界の向こう/透明な指先が触れたとき」と表現しているのも巧みですね。そして、その触れ合いが自分自身の存在を気づかせるのでしょう。
その後の展開は何か哲学的な感じですね。「あなたの目」の問いかけとは、自らの内に潜む「問い」の表れであるようにも思えます。
そして最終連の、「輝く世界はまだ私を知らない」という一行に、何かとても重要な意味が込められているように感じました。
輝く世界ををまだ私は知らないのではなく、輝く世界はまだ私を知らないということは、「私」は世界に知られることによって存在し得る、ということを示しているように思いました。そのことがその後の、「けれど あなたの瞳の中で/今もひそやかに息をしている」につながっているように感じました。
そう考えると、「存在とは〜」で始まる6連目は、西洋的な独立した存在観と、東洋的な関係性の存在観との対比であるようにも受け取れます。
哲学的な内容を含みながらも説明的にならず、表現の美しさが光っている作品だと思います。
特に改善点などはないように思います。評については、佳作としたいと思います。


11/11 「缶」 aristotles200さん

何だか星新一のショートショートのようで、面白いですね。
全体的を通して難解なところはなく、とても読みやすく仕上げられていると感じました。
底に謎のアルファベットだけがあるだけで、何のラベル表示もなく、何が入っているのかわからない缶詰が、いつの間にか机に置かれていた、というシチュエーションが面白いです。
また、それが何の缶詰なのか、本人が亡くなる最後までわからない、というところがこの作品の魅力ですね。
中身がわからないから、果物、豆、農薬、毒薬と想像し、さらにはUSBメモリ、フッ化タングステン(VI)、時限爆弾、そして宇宙船、金貨、多次元宇宙に至るまでその想像を膨らませてゆくところも、どこか滑稽でいいですね。
また、本人が亡くなって遺族が、「このまま一緒に天国に行ってもらおう」と言うところは、アイロニカルな中にも、どこかほのぼのとした温かさを感じます。
ただ最初の方で、缶の大きさや色合い(何cmくらい、鈍い銀色など)を描写してもいいかなと思いました。それにより缶の平凡さや特徴のなさを示すことで、中身がわからないことの不気味さや異様さがより強調されるのではないかと思います。
また些末なことですが、2連目の「重さは、固形物らしい」というところの「重さは」の後に、3連目の「500g(くらいか)」を持ってきて、「軽く振ってみる」の後に「中身は固形物らしい」と入れたほうが、よりスムーズに読むことができると思います。
それでも、一つの缶からこのような面白い物語を紡ぎ出す、その想像力の豊かさには敬服します。
評については、佳作半歩手前としたいと思います。


11/12 「剣豪なりけり」 喜太郎さん

剣に生涯を捧げた男の孤独を描いた作品ですね。
宮本武蔵がモデルでしょうか。ただ、宮本武蔵は大規模な合戦で大きな成果をあげたという記録はないそうです。
それはさておき、冒頭で幼い頃の様子から書かれているところに、読み手が入り込みやすくなる配慮が窺われます。
特に、「我が掌が赤く染まれども」という表現が、懸命に稽古に励んでいた様子を上手く表していて、いいと感じました。
また4連目の、「刹那の人生」という表現もいいですね。「今ここ」に己の全存在を注ぎ込んで生きてきた様子がそこに滲み出ていて、その後の、幸を必要ない思いだと切り捨てる姿勢につながっています。
さらに、死も地獄も恐れないながらも、己の死後に「剣豪」として名を残すことを願っているところが、名誉を重んじる武人の姿をよく表していると感じました。
だた欲を言えば、「胸の内は満たされぬまま」という心の内を、もう少し掘り下げてほしかったとも思いました。それがどのようなものだったのか、何らかの比喩(例えば木枯らしの吹き抜ける荒野など)を用いて表現してみてもよかったかもしれません。
また、ほぼ全編を通して本人の独白のスタイルをとっていますが、最終連だけ第三者の視点からの描写となっています。このような場合は、最終連の前にアスタリスクなどを置いて、何らかの区切りを表したほうがいいとも思います。
でも、剛毅ながらも哀愁と寂寥を内に秘めた「剣豪」の姿を見事に描いた作品だと感じました。
評についてはやや厳し目に、佳作半歩手前としたいと思います。

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