斬首 喜太郎
後ろ手に縛られて
跪き河原の石を見つめていた
覚悟を決めた時
頭を上げて空を見た
空の青さが 雲の白さが
目に焼き付く
もたげた頭を静かに当てられた刃先が
俯かせるよう促す
うなじに微かに当たる冷たい刃先に
ただ深く息を吸い込んで
ゆっくりと吐いた
刀を持つ人の足先が
大地に力を入れるのを
微かな小石の擦れる音で感じ取る
きっと刀は青空に近く振り上げられている
ゴクリと生唾を飲み込んだ
閉じた瞼のまま眉間に皺がよる
「やっ!」
何の罪を冒したのか
消えゆく記憶の中
手探りで探す
痛み 苦しみ
何も分かりはしないだろう
ただ切られ離れゆく頭と身体
切腹の名誉も無いことなど
もうどうでも良い事
負けたのだ
ただそれだけの事
我が命で救われる者が居るのが救い………
掠れてゆく………
梢の枯葉よ
北風に吹かれる前に
ただ落ちゆくなり