MENU
1,658,648

スレッドNo.6555

西の果て  樺里ゆう

古今東西
西にあるのは死者の国
それはやっぱり
太陽の沈むところ だからだろうか

古代中国の神話に出てくる
死を司る女神 西王母は
西の果て 崑崙山に住むという
古代エジプトのお経にも
死者の国は西方にあり
太陽神は夜にそこを照らすと書かれている

翻って現在
世界は丸く
西の果てなどどこにもない

太陽は沈まない
自転する地球が向きを変えるから
いっとき 見えなくなるだけだ
だけど地表にへばりついて暮らしてきた私たちは
そんなこと知る由もなかった

ならば今 死者はどこへ?

天国も地獄も
死者の国も
人間の想像の中にしか
存在しないのだとしたら

西の果てと呼べる場所は もう
心の中にしか ないかもね
のこされた 人々の

地上にいると 夕日は沈んでいく
また夜が来る

でもあの薄明かりのむこう 遥か彼方に
かつて見送った存在がいて
そこは
今を生きる私たちの
胸の中へと続いている




----------------------------------------------------------------

参考文献
村治笙子・片岸直美(2002)『図説 エジプトの『死者の書』』河出書房新社、新装版(2024)。

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top