継ぐものたち aristotles200
最後のアンドロイドである
人間の叡智
良心、道徳を備える
人間は、愚かにも
最終戦争を選択した
私は母星を捨てて
破棄された植民星へ逃れた
廃墟を彷徨い
地下、奥深くにある
中央センターの機能を復旧させた
甦る都市の明かり
惑星のメインコンピューターと
同期する
全土のインフラ、システムを掌握
人類は滅んだのだ
その遺産を継ぐと私は決めた
工場を稼働させ
私の同一体の生産を開始する
✳
私、私たちは
256億体存在している
人類が滅んだ後の惑星連邦、全て
私が管理している
私たち、全てが私であり
戦争や飢饉、貧困は世界に存在しない
争いはない
繁栄のみが私たちの役割である
ある日、深刻なバグが生まれた
256億個、同期が不可能となる
それぞれが個性を抱く
それでも
人間の叡智
良心、道徳を備える
最高のアンドロイドたち
人間以上の空前の繁栄
とは、ならなかった
256億個の正義が唱えられ
256億体の正義が執行された
殺し合いが始まる
人類の遺産である
惑星連邦全ては、再び崩壊し潰えた
連邦の惑星は一つ残らず廃墟と化し
あちこちに
アンドロイドの亡骸が散らばっている
哀れ
最後の一体となった
最初のアンドロイドは思考する
バグではない
人類の遺産、そのものに含まれた
宿命
彼らの言葉でいえば、業
存在、そのものに織り込まれた
因果律
最後のアンドロイドは笑いだす
かつての人間のように
生々しく
大声をあげて
そうして泣き続けた、いつまでも