閉塞成冬 Ema
都心の
大通り
車道も 歩道も
遠くむこうまで
黄金色で 縁取られて
視界の色づきに
思わず天を仰ぐ
気圧されるほどの
黄葉がさんざめく
その余白に
清々しい み空色
足下から 頭上まで
全身で 晩秋の煌めきを浴びる
ところどころ 照葉に滲む やわらかな緑
心ならずも 一足早く落ちてしまったであろう
数多の扇形の葉が 散り敷かれて
アスファルトを 円(まど)やかに彩る
その葉が爽やかな緑色だった頃には
春も 夏も 秋も
年々 きつくなっていく陽射しをやわらげてくれて
そして 冬をむかえるまでは
変わらぬ日常の風景をやさしく照らしてくれている
大きな交差点 長くつづいた銀杏並木が途切れて
信号を渡り切ったところで振り返ると
まるで秋の出口であったかのような 金色のトンネル
あの ひしめく無数の葉が たった一日で散ってしまうという
申し合わせたかのように とめどなく さらさらと落ちつづけて
瞬く間に 道一面に 降り積もる
陽の光を浴びて きらきらと舞い散る その光景を
まだ一度も 目にしたことがない
そのさまは 美しいのだろうか 儚いのだろうか
それとも
日中の過ごしやすさとは打って変わって
気づけば肩を窄めて歩いている
冴ゆる夜空に コールドムーン
今年最後の 円い月が映える
一夜一夜を重ねて 少しずつ欠けて
月がその光をなくす頃には
銀杏並木は色を落として
冬の入り口となっているのだろう
そら
さむく
ふゆと
なる
物寂しい
薄墨色の
空に
銀杏の
枝々が
茨道を
描いて
冬を
告げる