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スレッドNo.6574

◎2025/11/25~11/27ご投稿分 評と感想です。  (青島江里)

2025/11/25~11/27ご投稿分 評と感想です。


☆無限の螺旋  ゆづは さん

こちらの作品を拝見して今回、注目したのは、特別でないのに特別に感じられる空気感でした。拝見している間、あまくやわらかい雰囲気に包まれていたのですが、読み終えて冷静になった瞬間にふと思ったのです。全体的に書いている状況そのものを、落ち着いて把握すると、この作品の内容は、いつもよりちょっと贅沢なお菓子を食べながら、時間を忘れて詩作に時間を忘れて没頭しているシーンであるということに気づいてしまったのです。

詩ってつくづく面白いなって思います。同じ内容を書いても、十人十色、それぞれに色々な雰囲気が生まれてくるのですから。万人受けを意識することにハマってしまい、行き詰ったという人のお話も、時には耳にすることもあるのですが、こちらの作品は、そのようなことを微塵にも思わせない、作者の詩作に対する自由な空気を感じることができました。頭にビシっと、ねじり鉢巻きを締めてトコトン書いてやる!(そこまでする人はいないか・・・)っていうガチな姿勢もよいですが、こんな風なラフな気持ちで詩を楽しむこともアリだという、そんな作品があってもいいよねって思わせてくれる作品でした。

三連目にある「飾られた美しい言葉で満たす」についての余談的な感想です。個人的には、飾られた美しい言葉については、特に美しく見えるように意識する必要はないと思っています。選ばずとも、自らが心から美しいと感じて、満たされて溢れてくる気持ちが、勝手にそのまま、美しい言葉に変えてくれるからです。意識して飾り付けた美しい言葉を選んでしまうと、そこだけ浮いた言葉になってしまいそうです。なので、キャラメリゼがとんでもなくおいしくてしあわせだと自然に感じるような素直な思いに、これからも一つでも多く巡り合って、それらを起点として、一歩一歩、作者さんが、幸せな気持ちも、悲しい気持ちも、決して飾ることなく、心のままに表現できる人になれたらいいなって思いました。今回はふんわりあまめの佳作を。


☆斬首 喜太郎 さん

強い緊張感に包まれました。タイトルだけでも「斬首?!」って思ったくらいですから。この作品を拝見していると。小さい頃に父親がよく見ていた時代劇のワンシーンを思い出しました。本当に怖かったんですよね。作者さんが実際にドラマなどで、どれだけ目をそらさずに、そのシーンをみることができたのかは、わからないですが、かなり細かく丁寧に描写されていますね。或いは、ご自身が成りきって描かれたのか。いずれにせよ、とても丁寧に描写されている作品になっていると思いました。特に印象深かった表現はこちらです。


跪き河原の石を見つめていた

覚悟を決めた時
頭を上げて空を見た
空の青さが 雲の白さが
目に焼き付く

息絶え絶えにころがっているような河原の石と反転して、眩しすぎるほどの空の色、雲の色。生の後に続くであろう逃れられない命の終点が読み手に悲しみと大きな影をもたらしました。

うなじに微かに当たる冷たい刃先に
ただ深く息を吸い込んで

うなじに微かに当たるという表現。刃先というわずかな部分に、冷たさを感じるという表現は、これから始まることに対しての怖さに対する形が見えてきました。

刀を持つ人の足先が
大地に力を入れるのを
微かな小石の擦れる音で感じ取る
きっと刀は青空に近く振り上げられている

刀を持つ人の足先についての表現。微かな小石のかすれる音を感じ取るという表現は、これから始まるという緊迫の恐怖と戦う登場人物の描写が伝わってきました。また、感じ取るという言葉使いにより、この方は目を閉じているのだと伝わってきました。そして、きっと刀は青空の部分も、目を閉じてひたすら歯を食いしばって覚悟するという姿が浮かび上がってきました。

梢の枯葉よ
北風に吹かれる前に
ただ落ちゆくなり

斬首が終わった後の場面のレトリック。そのままに実写すればとんでもないことになりますが、枯れ葉が北風に吹かれる前に落ちてゆくということから、年老いた人間が通常とは違う悲壮な覚悟を持って命を落としてゆくということを、そっと感じさせてくれました。

今回は、いつもとは違う雰囲気の作品でしたね。新しい分野を広げる勇気っていいなぁって思いました。あれもこれも詳しく書こうとすると、長々ダラダラ、ツメツメになってしまうことも多いのですが、こちらの作品は焦点を縛った場面表現と、ほどよいまとめ方で、伝わってくるものが多かったです。佳作を。


☆永遠に続く刑罰  光山登 さん

光山登さん。はじめてさんですね。太陽に照らされた新緑の美しい山を登るような素敵なお名前ですね。今回は感想のみを書かせていただきますね。

人に出してはならない手を出してしまう。後戻りできない大ごと。刑罰を逃れたということは、誰かが身代わりになったのか、あえて誰かが、「僕」のために、そうしてくれたのかはわかりません。こちらに登場される「僕」は、逃れられて生きてゆくことに、非常に重い罪を感じていられるということが、強く伝わってきました。今回の作品の内容は、事実に基づくものであるのか、原作のあるものに基づくものであるのかはわかりませんが、この作品のそのまま、はっきりさせる必要はないと思いました。

この作品を拝見するにあたって一番大切な焦点は、自分の気持ちに重い偽りを持つ苦しみなのだと思いました。あの時良かれと思って塗り固められたものが、鉛のようにどんどん重くなってゆく、計り知れない辛さなのだと思いました。救われる出口を求めてさ迷わなければならない、あてのない辛さ。いつの日か誰かに知られるかもしれないという不安や、真っ白な暮らしの中で異分子のように感じてしまう「僕」の心の模様が「真っ白な暮らしに差す一点の染み。」という表現で描かれているところを目にすると、何とも言えない気持ちになりました。

刑罰を伴う出来事でなくても、人には偽りの生活や仮面をかぶった日々を過ごさなければならないことは、大小、あると思います。今回の詩の内容と全然違うことだとしても、そういう、とても大きなくくりとしての心の領域を介して、遠いけれど、同じような辛さを感じる人も出てくるかもしれないなと思いました。「どのようにして生きてゆくか」に通ずる、とても難しいテーマの中にある作品だと思いました。


☆生  荒木章太郎 さん

生。生ビールの生という読み方で「なま」で、新鮮な状態を始まりとしていますが、見方を変えれば「せい」、「生きる」や「未加工」という意味にも捉えられそうです。

アプローチの方法がとてもユニークな作品だと思いました。生ビールの生に掛けて、だんだんと人の生きざまに関することにスライドされてゆきます。最終連の着地では、夕焼けになっていて、未加工を意味する自然の景色になっていて、印象深いものとなっていると思いました。

三連目以降、ストレートに生きてしまえば、叩かれることもある、何でもそのままストレートではうまくいかない世の中、時には泣く泣く自分を変えてやりとりしなくてはならない状況表現が切ないほど伝わってきました。

この三連目までに繋げる一連、二連目について。

一連目。生ビールがなくなるから人間も生ではなくなるとされているというと、全体を読み終えてからではないと、そのままでは意味合いが伝わりづらい気もしました。同じく、ビールはもともと火を通しているから人間も火が通っているという部分についても。

三連目の「生半可」と「生焼け」に繋ぎたいという気持ちは、痛いほどわかるのですが、今作に関しては、ちょっと無理があるようにも感じられました。あぁ、ものすごくもったいないなぁって思いました。どうしたらいいかなぁって、自分なりに考えてみました。個人的には、こんな感じになりました。何かお役に立てたら嬉しいです。

乾杯
生ビールがなくなるんだって
そういえば近頃
人間も生粋の生っていう奴を
見かけなくなった気がする

ビールはもともと熱を通しているよ
人間にだってもともと
何かに熱くなる熱はあったはずなのに


ビールから直接人間云々にするよりは、はっとビールを見て思いだしたという感じにすれば自然かなと思い、このようにしてみました。あとは、四連目の初めの「言葉を使うようになってから」の「言葉」ですが、どんな言葉かを詳しく示すことで「生」を強調できると思いました。「濁った言葉」など、澄んだイメージとは真逆な言葉をつけ足してみるのもいいかなと思いました。

一連目と二連目がスムースに繋がっていれば、捻じれそうになるくらいの切なさが伝わってくる作品として、より一層、印象深いものを残してくれる作品になると思いました。世の中うまくいかないなぁって思いつつも、夕焼けの中に立って、それでもまた、明日のことを考えている人物の影が私の前にきました。今回は佳作半歩手前を。



☆ダ・カーポのように争いは。 トキケッコウ さん

はじめましてさんですね。トキケッコウさん、今回は感想のみを書かせていただきますね。

今まであまりお目にかかったことの雰囲気の作品でした。こちらは恋愛のやり取りに関して表現のようにも思えますが、はっきりとは言い切れない感じです。作中に「戦争の後始末」という言葉もあります。かなり遠巻きに戦争に関連することに言っているのか、それとも男女の大げんかの後についてのことなのか。人それぞれ、読み方によってかなり変わってくる気もしました。

彼女は「ガラスの妖精」で彼が「太陽の化身」。太陽が熱くなればガラスが溶けるという関係性を模しているということを感じるのですが、各々の実態については、しっかりした正解は断定できない謎の世界が広がりました。大きな意味合いで謎を解こうとすると、幾種類ものたとえが生まれてきそうな気がします。この謎の空気感が作品のカラーを濃くしているようにも思えました。

作者さんが作品の芯の中で立てていることを、作者さん究極の独自の言葉で包んで、この作品は完成されているように思いました。こちらの作品を拝読するにあたっては、一文一文、一語一語、ひとつひとつを自分なりに読み解いてゆくという、謎解きの世界の奥の奥にあるものを探りながら、触れながら読み進めてゆくという楽しみ方が感じられました。独特の奥深さが印象的な作品でした。

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いつのまにか十二月です。一年は早いですね。
何かと忙しい毎日、風邪にお気をつけて。
どうぞ、どうぞ、あったかく。

みなさま、今日も一日おつかれさまです。

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