憂世 山雀詩人
ベッドは海だろうか
それとも湖だろうか
あおむけに
四肢をのばして寝転べば
まるで浮かんでいるようだ
ぷかぷかと
水のまにまに
ほら、どこだっけ
イスラエルだっけ
あの辺にさ
死海ってあるでしょ
海なのに湖で
湖なのに海より海で
塩分が濃く人が浮く
あそこみたい
行ったことはないけれど
もしあそこで浮かんだら
こんな感じじゃないかな
ふわふわと
ゆらゆらと
全しがらみから解放されて
浮く
そうか
ここは死海なのか
だとしたらおもしろい
日がな一日ぷかぷかしよう
だらだらしながらぷかぷか
もぐもぐしながらぷかぷか
本を読んだり詩を作ったり
ときどきタバコもぷかぷか
塩分の濃すぎるがゆえ
死海には魚も住まぬ
地球に何も貢献しない
そんな湖いるんだろうか
でもそれもよし
それゆえに浮くのだから
この部屋もまた誰も住まぬ
我が憂鬱の濃すぎるがゆえ
何の役にも立ちゃしない
こんな憂鬱いるんだろうか
でもそれもまたよし
それゆえに浮くのだから
憂世は浮世
今日も憂世を浮かんかな
あおむけに
涙こらえて浮かんかな
ぷかぷかぷか
ぷかぷかぷか