琥珀 ゆづは
恐竜が好きだったね
無邪気な瞳が煌めいて
「トイケラ」と言う
あの小さな声が愛おしかった
大きな恐竜の背に
君の声が重なり
何度も、何度も
「トイケラ」と
空に向かって叫んでいた
月日が流れ
君の声も少しずつ変わり
いつしか
「トリケラトプス」と
美しく言えるようになった
けれど──
恐竜たちは姿を消し
君の世界は光る画面の中に広がり
カラフルな夢が
指先を惹き寄せた
成長の果てに
ささやかに失われたもの
それは今も
どこかに眠っているだろうか
それとも
遠い記憶の地層で
化石となり埋もれていくのだろうか
大人になった君はすっかり
恐竜たちの名を呼べるけれど
あの不器用で愛おしい響きは
私の胸の奥で
琥珀のように
輝き続けている